2013年8月23日金曜日

六月の空

詩・浅井千代子(本会世話人)

「おばちゃんの詩集、貰って帰っていい
 他の国の友人にも読んでもらいたいの」
と電話に出た姪
アメリカへ帰る支度中らしい
具合が悪いという兄の声が聞き度くて
電話を入れた六月の或る日の午後
詩集とは以前兄に届けた小冊子

姪は大学卒業後
宝石デザインの勉強にアメリカへ
其の後彼の地で中国人男性と結婚
三女をもうけロス・アンジェルスに住む
今回長女が東日本大震災被災地に
ボランティアで訪れ同じ活動の京都の
男性と結ばれ
先日大阪市内の教会で結婚式を済ませたばかり
「いいよ! どうぞ…」
私の小さな詩集が海を渡って見知らぬ国の
普通の人が読んでくれる
反対する理由なんてない
「見送れなくて御免ね 元気でね 又ね」

詩集は
平和憲法九条
「随想詩集・あの頃」
表題もデザイン表紙も
鍋嶌孝之助さんの手づくり
かつて大阪で
「明日も晴れ九条の会」の会報編集者だった方
私の数篇の投稿詩を冊子にまとめ送って下さった
善意の小さな一冊

これからも書きつづけるのみ
梅雨が遠い
六月の青い空が
どこまでも広がっている
姪が飛んでゆく
あの空

『異郷』第25号(2013年7月)から
イメージは、浅井さん手製の9条バッジをあしらった絵葉書。

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