2012年6月29日金曜日

『橋下市長が設置狙う「近現代史施設」は侵略美化:小牧薫さん』


 ブログ「【堺からのアピール】教育基本条例を撤回せよ」の表記題名の記事が、2012年6月5日付け『しんぶん赤旗』の記事を紹介しています。内容は、橋本市長が打ち出した「日本の近現代史を学ぶ施設」の構想をどう見るかについて、大阪歴史教育者協議会の小牧薫委員長の意見を聞いたものです。小牧さんは「堺からのアピール」賛同人の一人とのことです。

 小牧さんが次のように述べていることは、特に留意すべきです。

 「戦後の歴史教育は、こうした研究の到達点や日本国憲法の理念に基づき、平和で豊かな国、人権が尊重される社会をめざして行なわれたきました。「両論併記」と言って、歴史研究の成果を否定し、一方的な歴史解釈を行政が押し付け、子どもたちに学ばせることは許されません。ゆがんだ歴史認識を広げる狙いは、憲法9条を改悪して戦争の出来る国にし、自らすすんで戦場へ行く若者を育てるということにあります。」

 記事全文はこちらでご覧になれます(紙面コピーをクリックすると拡大画面が出ます)。(多幡記)

2012年6月27日水曜日

動画紹介:「ハシズム」で日本は沈む(1)


 ブログ「【堺からのアピール】教育基本条例を撤回せよ」で下記の動画を知り、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思いましたので、ここでも紹介します。

題 名:JCJ6月集会 「ハシズム」で日本は沈む(1)
長 さ:2時間59分59秒
録画日:2012年6月16日
パネリスト:
  • 倉重篤郎(くらしげ あつろう)毎日新聞政治部編集委員
  • 白石草(しらいし はじめ)ビデオジャーナリスト、OurPlanet-TV 共同代表
  • 新妻義輔(にいづま よしすけ)帝塚山学院大教授 — 経歴:1965年、朝日新聞入社。大阪本社編集局長、モスクワ支局長・ 中東特派員、外報部長、監査役などを歴任

 柴田哲治 JCJ 日本ジャーナリスト会議代表委員(元朝日新聞科学部)の開会挨拶で始まり、続いて、新妻教授の基調講演「橋下流政治:橋下現象の見取り図」があります。
 動画 (Ustream) はこちら
多幡記

2012年6月25日月曜日

「九条の会」メルマガ第143号:原子力と「安全保障」(軍事目的)〜マスメディアのいう「決められる政治」は議会政治の自殺行為


 表記の号が2012年6月25日付けで発行されました。詳細はウェブサイトでご覧になれます。運動に活用しましょう。主な内容は次の通りです。
  • 事務局からのお知らせ
    • 「9条、そして沖縄問題の焦点を学ぶ」~事務局主催の学習会ひらく
    • 九条の会講演会は9月29日(土)13時(開場12時)~16時
    • 「第4回九条の会全国交流集会報告集」およびDVD「第4回九条の会全国交流集会 全体会の記録 」普及にご協力を
    • ブックレット「加藤周一が語る」重版できました
    • 「九条の会」リーフレットは、いま2種類
     など
  • 各地から:全国の草の根にはこんなに多彩な活動が
    • 九条の会東京連絡会(東京都)
    • 津山九条の会(岡山県津山市)
    • 鳥取市「9条の会」(鳥取県鳥取市)
    • 九条の会・はつかいち(広島県廿日市市)
    • あいち九条の会(愛知県)
     など
  • 活動報告
    • 九条の会・たじみ(岐阜県多治見市)~7周年平和への集い
    • 全国全県で市町村長九条の会を作りましょう!
      東北の市町村長九条の会からの呼びかけ
  • 編集後記:原子力と「安全保障」(軍事目的)(全文を以下に引用)
 今回、原子力規制委員会設置法の附則で、原子力基本法の『民主・自主・公開』の「平和三原則」を骨抜きにし、「目的」に、「安全保障に資する」という文言を忍び込ませる、というとんでもない改悪が行われました。このところ、マスメディアでは「決められる政治」なるフレーズを使った政治批判が流行しています。この批判は愚の骨頂です。会期末のどさくさに紛れてこのような重大なことが、ろくに審議もされず、報道もされないままに「決められ」ました。これでは議会政治の自殺行為です。

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2012年6月23日土曜日

お知らせ:九条科学者の会主催公開学習会(6.24)


2012年5月16日付け『ニュースレター九条科学者 』(号外・行事案内)から、表記の集会についてのお知らせを転載します。
  • 日 時:2012年6月24日(日)13時~16時
  • テーマ:「イレッサ薬害訴訟における東京・大阪両高裁判決について―憲法第13条・25条から、その当否を考える―」(仮題)
  • 講 師:片平洌彦氏(医療財団法人「健和会」臨床・社会薬学研究所長)
  • テーマ:「日本の宇宙軍拡の現状とJAXA法改悪の問題点」
  • 講 師:浜田盛久氏(東京工業大学特任助教)
  • 会 場:東京都文京区スポーツセンター会議室(東京メトロ丸ノ内線茗荷谷駅下車5分)
    東京都文京区大塚3-29-2、電話 03-3944-2271
    地図はこちら
  • 参加費:無料、資料作成上、ご参加希望の方はメールでご連絡下さい。newsletter@9-jo-kagaku.jp

JAXA法改悪案が成立:宇宙の軍事利用へ道開き、軍事大国化目指す政治家たち


 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の業務を「平和の目的に限り」行うと定めた JAXA 法からこの規定を削除する改定案など、宇宙の軍事利用を進める体制整備の関連法案が、さる6月20日の参院本会議で民主、自民、公明、みんななどの各党の賛成多数で可決、成立しました。日本共産党と社民党は反対しました。(詳細は、たとえばこちら。)

 一昨日当ブログで紹介しましたように、原子力規制委員会設置法の付則で原子力基本法の基本方針に「我が国の安全保障に資することを目的」とするとの変更をしたことを初め、憲法の平和主義にそむく立法が進んでいます。空恐ろしいことではありませんか。私たちは、このような動きに対して、力を合わせて反対の声を上げなければなりません。(多幡記)

2012年6月21日木曜日

問題の多い原子力規制委員会設置法可決の暴挙


 新たな原子力規制を担う「原子力規制委員会」設置関連法案が6月20日の参院本会議で、民主、自民、公明などの賛成多数で可決、成立しました。原子力規制委員会設置法は、政府案にあった40年廃炉の原則を「速やかに見直しを検討する」と骨抜きにしています。また、京都議定書目標達成計画で原発の「いっそうの活用を図る」と宣言する環境省のもとに規制委員会を設置するとしており、「真の独立性」は担保されません(6月20日付け、しんぶん赤旗「原子炉の半永久的稼働に道」)。

 さらに大きな問題は、6月21日付け東京新聞が「『原子力の憲法』こっそり変更」と報道しているように、原子力規制委員会設置法の付則で、「原子力の憲法」ともいわれる原子力基本法の基本方針が変更されたことです。すなわち、付則の一二条において、原子力の研究や利用を「平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に」とした基本法二条に一項を追加し、原子力利用の「安全確保」は「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として」行うとしたのです。

 日本初のノーベル賞受賞者となった湯川秀樹らが創設した知識人の集まり「世界平和アピール七人委員会」は6月19日、「実質的な軍事利用に道を開くという可能性を否定できない」「国益を損ない、禍根を残す」とする緊急アピールを発表していました。それにも関わらず、このような変更がこっそりと行なわれたことは許せません。(多幡記)

2012年6月20日水曜日

緊急学習講演会:橋下「維新の会」の正体


 表記の講演会が下記の要領で開催されます。

■と き:2012年6月29日(金)18:30〜
■ところ:堺市民会館大集会室
■講 師:一ノ宮美成さん(宝島社記者)
■主 催:自由と自治・進歩と革新をめざす堺市民の会(堺市民懇)
  連絡先:〒590-0021堺市堺区北三国ヶ丘町1-2-29
      堺市教育会館内
      TEL 072-221-1717 FAX 072-223-6115

 一ノ宮美成さんのプロフィール
 1949年大分県生まれ。同志社大学文学部卒。新聞記者、フリージャーナリストを経て、現在「宝島社」編集2局第3編集部記者。主な著書に『闇の帝王(許永中)』(宝島社文庫)、『黒い都知事 石原慎太郎』(宝島 SUGOI 文庫)、『橋下「大阪改革」の正体』(講談社)など多数。

 呼びかけのことば
 多くの国民・識者の反対の声を無視して、教育・職員基本条例、思想調査、入れ墨調査などを強行した橋下・維新の会。これでこかといわんばかりに、憲法違反、人権侵害をくり返しています。
 しかし一方では、「家庭教育支援条例案」は、あまりのひどさに撤回せざるをえませんでしたし、「大飯原発再稼働」問題では、これまでの態度を豹変させて、容認にまわり、国民の不信をかっています。
 いま、ピース大阪とリバティ大阪をつぶして、「新しい歴史教科書をつくる会」の意見を取り入れた新しい近現代史博物館の建設が計画され、また、「市政改革プラン」で市民生活関連予算が大幅にさくげんされようとしているとき、あらためて橋下・維新の会の本質を学習し、運動にいかしましょう。

2012年6月17日日曜日

ブックレット『放射能からいのちとくらしを守る』



 日本科学者会議から表題のブックレットが刊行されました。

 本の泉社、2012年、A5版、80ページ、700円(税込み)、アマゾンの当ブックレット情報ページはこちら

 日本科学者会議会議は、1972年に北海道で岩内漁協など地元住民と共催の第1回原発問題シンポジウムを開催し、以後毎年、各地で同シンポジウムを行ない、原発の危険性を訴えて来ました。2011年3月11日発生の震災で、同会議が恐れていたことが現実となってしまいました。

 「はじめに」と「第 II 章 放射線による健康被害」「第 III 章 外部被曝から身を守るには?」の執筆者の安斎育郎氏は、東大工学部助手だった当時、上記の全国シンポジウムを組織した日本科学者会議・原子力問題研究委員会の委員長であり、現在、福島県内の除染活動や全国での講演会などに、休む間もなくご活躍中です。(私たちの福泉・鳳地域「憲法9条の会」でも、2009年11月1日、堺市西区内の九条を守る団体・個人と協力して開催した集会で、「守り広げよう憲法9条」と題する講演をしていただきました。)

 その他の章の内容は次の通りです。
第 I 章 福島第一原発で何が起こったか 深尾正之
第 IV 章 食べものの汚染と内部被曝から身を守る食べ方の工夫 池上幸江
第 V 章 土壌や海水の汚染の実態と対策
1) 農地の放射線汚染と浄化・修復 生井兵治
2) 海洋と海洋生物の汚染と漁業の復興 川崎 健
第 VI 章 脱原発への道すじ 深尾正之

 以上、『日本の科学者』Vol. 47, No. 7, p. 57 Books 欄 (2012) を参考にして紹介しました。(多幡)

2012年6月11日月曜日

仲間




浅井千代子(本会世話人)

源さんと
お咲ばあさん
二人は同い年
かれこれ四十数年来
共に舞台をつとめてきた人形劇の人形です
作ったわたしは老齢となり
数年前グループを引退した
人形の彼等は年をとらないので
相変わらず元気で活躍している
この三月十三日は
六十七年前アジア太平洋戦争で
大阪は大空襲に見舞われ
火焔の中を大勢の人々が逃げまどった日
生命を失った日です
源さんと
お咲ばあさんは
大阪難波高島屋前の
街頭署名活動に参加します
空襲被害者援護法(仮称)の制定を求める署名
沖縄民間戦争被害者に対する特別補償法(仮称)を
 求める署名
共に大阪空襲訴訟原告、弁護団、支える会の活動の
 一つです
風は冷たいけど
お天気は晴れのようです
二人はすっかり用意が出来たようです
沢山の署名が集まりますように

『異郷』第20号(2012年4月)から
写真提供も浅井さん

2012年6月10日日曜日

「九条の会」メルマガ第142号:野田改造内閣で森本氏の防衛相起用は大きな問題


 表記の号が2012年6月10日付けで発行されました。詳細はウェブサイトでご覧になれます。運動に活用しましょう。主な内容は次の通りです。
  • 事務局からのお知らせ
    • 九条の会講演会は9月29日(土)午後(詳細未定)
    • 9/29 九条の会講演会:9月29日(土)午後(詳細未定)
    • 「第4回九条の会全国交流集会報告集」およびDVD「第4回九条の会全国交流集会 全体会の記録 」普及にご協力を
    • ブックレット「加藤周一が語る」重版できました
    • 「九条の会」リーフレットは、いま2種類
     など
  • 各地から:全国の草の根にはこんなに多彩な活動が
    • 9条の会・今治(愛媛県今治市)
    • 富士見町九条の会(東京都東村山市)
    • 落合・中井九条の会(東京都新宿区)
    • 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 (九条科学者の会)
    • たかつ九条の会(神奈川県川崎市)
     など
  • 活動報告
    • 鹿児島9条ラン(鹿児島県)
  • 編集後記:野田改造内閣で森本敏・拓殖大学大学院教授が防衛相になった(全文を以下に引用)
 野田改造内閣で森本敏・拓殖大学大学院教授が防衛相になった件が注目された。森本氏は自衛官出身で、麻生政権の防衛相補佐官。「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)運営委員でもある人物で、集団的自衛権行使を容認するという発言を繰り返してきた人物。森本氏は、就任にあたって、この問題は、内閣に従うと発言したが、こうした人物を野田首相が防衛相にしたことは大きな問題だ。第9条の明文改憲の動きとあわせて、集団的自衛権の政府解釈の変更を主張する声が方々から聞こえてくる中でのこの人事は、たいへん危険な動きだと思う。

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2012年6月9日土曜日

ブログ記事紹介:【動画】大阪市「こどもの家」を守れ!〜橋下行革プランで危機


 橋下徹大阪市長は5月11日、3年間で488億円もの予算をカットする「市政改革プラン」の素案を発表しました。見直しや廃止対象となった事業は100以上にのぼり、教育分野­や福祉分野など多岐にわたっています。1970年代にスタートした「子どもの家」事業は、大阪市独自の事業ですが、橋下行革プランはこれを学童保育で代替するとしています。

 「【堺からのアピール】教育基本条例を撤回せよ」事務局による表記のブログ記事は、Our Planet TV の動画[ゲスト:北村年子(ノンフィクション作家)、聞き手:白石草(OurPlanetTV)]を引用し、大胆な行革を目指す大阪市の足元で何が起きているのかを、西成区の通称「釜ヶ崎」と呼ばれる日雇い労働者の街にある「子どもの里」に焦点を当てて明らかにしています。ここをクリックして、ぜひご覧下さい。

2012年6月8日金曜日

お知らせ:「九条科学者の会かながわ」第17回学習会


2012年5月16日付け『ニュースレター九条科学者 』(号外・行事案内)から、下記の集会についてのお知らせを転載します。

「九条科学者の会かながわ」第17回学習会
(第18回憲法9条かながわフォーラム)

「九条科学者の会かながわ」は、日本科学者会議神奈川支部と共催で、以下の要領で第17回学習会を開催します。いま、小型探査機「はやぶさ」などで知られる、宇宙分野で世界に誇る活躍をしてきた宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の最先端技術や施設、研究者を、軍事動員するためにJAXA法の改悪が企てられています。この動きに反対し、「これからの宇宙開発は憲法9条を生かした平和主義でいこう」という、インターネット署名が広がっています。ネット署名の呼びかけ人の一人である総合研究大学院大学教授で宇宙物理学者の池内了氏に、JAXA法の改悪について詳しくお話を伺います。多くの皆様のご参加を呼びかけます。
  • 日時:2012年6月10日(日)14時~16時
  • 講師:池内 了 氏(総合研究大学院大学教授、宇宙物理学)
  • 演題:JAXA(宇宙航空研究開発機構)法の改悪について
  • 会場:鶴見大学会館2階研修室204
  • 交通:JR京浜東北線鶴見駅西口下車徒歩2分、京急線京急鶴見駅下車徒歩3分
  • 資料代:200円
  • 主催:九条科学者の会かながわ・日本科学者会議神奈川支部
  • 連絡先:後藤仁敏 tel: 090-7175-1911、e-mail: goto@kd5.so-net.ne.jp

2012年6月6日水曜日

情報短信:「日本国憲法が最先端」と米憲法学者らが分析


◆衆参両院の憲法審査会が始動し、自民党、みんなの党、たちあがれ日本などが改憲案を発表。そのどれもが九条と天皇を標的としています(注1)◆自民党が4月末に発表した草案は、天皇を「元首」に、「国防軍を保持」などとし、現憲法の平和主義を正面から踏みにじっています◆議員連盟が「一院制とする」改憲原案を国会には初めて提出しました◆「大阪維新の会」は「維新八策」原案を発表し、9条改定、参議院廃止などを主張。橋下氏は「ガレキ処理が進まないのも9条のせい」という荒唐無稽な理屈で、9条への憎悪をむき出しにしています◆憲法記念日の全国紙は真正面から改憲論議を煽っており、憲法を生かすべきと論じた大手メディアは一つもありません◆皮肉にも、5月3日付け朝日紙の国際面は、米憲法学者らが世界188か国の憲法を分析した結果、日本国憲法が最先端、と報じていました(注2)。

『憲法九条だより』第17号(2012年5月10)から


 注1. さる5月31日に行なわれた憲法審査会での議論は、「<衆院憲法審査会>9条改正、各党割れる」(毎日新聞)あるいは「憲法9条に照らして日米安保なくすのが筋:衆院審査会 笠井氏が主張」(しんぶん赤旗)をご覧下さい。

 注2. 朝日紙の報道によれば、分析したのはワシントン大学(米ミズーリ州)のデービッド・ロー教授とバージニア大学のミラ・バースティーグ准教授。日本では、米国の「押しつけ」憲法を捨てて、自主憲法をつくるべきだという議論もあることについて、ロー氏は「奇妙なことだ。日本の憲法が変らずにきた最大の理由は、国民の自主的な支持が強固だったから。経済発展と平和の維持に貢献してきた成功モデル。それをあえて変更する政争の道を選ばなかったのは、日本人の賢明さではないでしょうか」と語ったということである。

2012年6月4日月曜日

戦争体験を語る:「どんな理屈をつけても戦争はみじめなもの」——三池尚道さん



上・三池尚道さん

 私は一生懸命働き、貧乏な生活をして頑張ってきましたが、子や孫たちは立派になってくれたし、よくしてくれるし、恵まれています。戦争時代のことを話してやると、「じいちゃん、大変やったんやね!」と、よく聞いてくれます。本当に感謝して過ごしています。いまの願いは、若い人たちに私たち戦争経験者の気持ちを分かってほしいということです。そして日本の平和を守ってほしいと思います。どんな理屈をつけても戦争はみじめなものですわ。平和を守るためにお役にたてるならと思い、体験したことを話してみます。

小学校や会社でも軍事教練

 私は昭和2年、男ばかり5人兄弟の4番目として生まれ、大阪市福島区海老江で育ちました。当時から体は大きかったので、相撲は強かったですね。しかし、戦争ごっこはなぜか嫌いでした。尋常小学校の上級生になると軍事教練がありましたが、熱心にはやりませんでした。

 学校を卒業し、昭和16年4月、此花区にある住友金属に入社しました。ここでは、午前は工場内の学校で勉強をし、午後は仕事という生活でした。こここでも軍事教練があり、私にとってきびしくきついものでした。ほふく前進したり、銃を担いで走ったり。横山(いまの和泉市)の山中で特別野戦訓練という、ひどい訓練を一週間もやらされたこともあります。ここでもますます戦争嫌いになりうっとうしくなっていました。

仲間の『資本論』携行で特高警察に

 その頃こんなことがありました。その日は何かの理由で昼で仕事を終わり、20人ほどで朝日橋を歩いている時、特高警察に「おいこら!」と呼び止められ、全員手錠やひもを掛けられ、此花警察に連れていかれました。何が何だかわかりません。取り調べが始まって分かりました。誰かがマルクスの『資本論』を持っていたそうです。それで「『資本論』を読んだやろ」と聞かれたが、当時の私はマルクスのマの字も知りませんでした。「知らない。読んでない。」と何度いっても「嘘つけ!読んだやろ!」と決めつけて、こちらのいうことは聞きません。夜中になって、4人を除いて帰してくれました。その4人がその後どうなったか、会社には二度と来ませんでした。

16歳で海軍予科練志願、死ぬ覚悟

 学校の先生は私が戦争嫌いなことが気に入らないらしく、私にだけ名指しで決めつけたように、「兵隊に行け!」と何度も命令のようにいいました。自分では行きたくないと思っていましたが、社会全体がそういう流れにあり、口に出して「いやです」ということもできず、当時「若い血潮の予科練の 七つボタンは桜に錨…」と歌われた海軍予科練(少年航空兵のこと)に志願してしまいました。16歳でした。このとき、「兄も戦死していたし、自分も死ぬことはしょうがないな!」と覚悟をしました。

 昭和18 (1943) 年3月末、茨城県土浦にむかい、海軍予科練14期生として入隊しました。軍隊の中はひどいものでした。何か上官の気に入らないことがあると、「ビンタ」と「バッタ」の嵐です。「バッタ」とは一列に並んで壁に手をつかせ、ズボンを脱いでお尻をつきだし、上官がその尻を叩くことです。はじめは青竹で叩きますが、何人かでバラバラに割れてしまいます。今度はツルハシの柄で叩くんです。しかも力いっぱい。どづかれない日はなかったですね。

軍隊の非人間的扱い

 治らないうちにまた叩かれるのですから、お風呂のとき見ると、みんなお尻が血豆で青くなって、固くなり、段がついていました。一人がへまをすると皆が叩かれるんです。辛抱しきれなくて夜間にトイレで、ベルトで首をくくって自殺した人が3名いました。自分もそんな気を起こしたこともありましたが、「しゃーない!」と、あきらめていました。軍隊とはこんな人間扱いしない所かと、ますます戦争嫌いになりましたが、もちろん口にすることは仲間内でも出来ませんでした。

 飛行機の練習は、「赤とんぼ」(写真参照)という練習機でやりました。どれも調子わるくて、空を飛んでいるとき、突然エンジンが止まったことがありました。ぐんぐん降下しているとき、セルを必死にまわしていたら、やっとエンジンが掛かって命拾いしたことがありました。もちろん落ちて亡くなった人もいました。


「赤とんぼ」こと、海軍93式中間練習機

 半年たった昭和18年9月に、岡崎(現在の三河安城市)に配属になりました。14期生の中には鹿児島県鹿屋基地や沖縄に特攻隊として配属されたものもいましたが、みんな死んだようです。岡崎で辛かったのは、雪の積もった飛行場で30分間の腕立て伏せでした。素手でやらされるのですから、手が冷たく、やがて感覚がなくなっていきます。途中でやめると、ツルハシの柄で叩かれ、半殺しにされました。ひどい訓練でした。食料については、ぜい沢はできませんでしたが、量は十分あり、終戦まで不自由することはありませんでした。

人間魚雷艇の訓練

 このころから練習するにも飛行機がない状況になってきました。そうするうち、昭和18年秋頃、14期生ばかり静岡の戸田(へだ)に配属されました(現在の静岡県沼津市戸田海岸)。ここの切り立った海岸沿いの山をくりぬいて、「丸大」の基地作りをすることと、訓練をすることが目的でした。「丸大」とは海軍独特の名前で、いわゆる敵船に魚雷を抱いて体当たりする一人乗りの人間魚雷艇のことでした。(次号に続く)

『憲法九条だより』第17号(2012年5月10日)から

2012年6月2日土曜日

広報活動のはき違え


 政府がねらう消費税の大増税に向け、財務省の幹部職員が各地の大学で「説明会」を行い、正規の講義の時間を使って、消費税増税の必要性を訴える一方的な宣伝を行っていたことが、2012年6月1日付け『しんぶん赤旗』に報告されました。その記事には、財務省大臣官房が、「財務省から各大学当局に開催を働きかけ、協力を得られたところで『説明会』を開いている。政府の広報活動の一環であり、講師には職員旅費を支給している」と述べたことが記されています。

 大臣官房のこの言葉を読んで驚きました。これは、「政府の広報活動」の大変なはき違えではないでしょうか。財務省設置法第二節「財務省の任務及び所掌事務」には広報の規定がないばかりか、内閣府設置法第四条三十八項 の「広報」についての記述でも、「政府の重要な施策に関する広報に関すること」とあり、「施策」とは、「ほどこすべき策。実行すべき計画」(大辞林)であって、「実行すべきとの案がある計画」などが含まれる道理は全くありません。行政機関である省庁が、立法府で定められる以前のことの推進を図るという意味でも、明らかな越権行為というべきでしょう。

多幡記