2013年6月30日日曜日

「日本国憲法の基本的理念を否定する改定の動きに反対する」:世界平和七人委員会がアピール


 世界平和アピール七人委員会(現委員は武者小路公秀、土山秀夫、大石芳野、池田香代子、小沼通二、池内了、辻井喬の各氏)は、6月28日、東京・学士会館で記者会見を開き、表記題名のアピールを発表しました。

 アピールは、「現行憲法の基本理念を否定する改定への動きに、主権者であるすべての国民が注目し意見を表明」するよう要望しています。また、自民党の「日本国憲法改正草案」が、「現行憲法第九条の➁の戦力を持たず、国の交戦権を認めない規定を削除して、集団的自衛権を含む自衛権の名の下で国防軍を設置して、第九章の『緊急事態』の下で、国民の批判を一切許さずに国の方針に従わせる義務を課そうとして」いることを指摘しています。

 ほかにも、上記の草案が、憲法改定条件の緩和を含むこと、国民主権を事実上放棄させ、政府に国民を従属させる構造になっていること、文民統制を完全に空洞化するものであること、などを指摘しています。

 そして、「敗戦以後積み重ねてきた平和を愛好する国としての日本の努力と成果を、敗戦と被占領の不本意な結果だとして否定し去ろうとする動きによって消し去るという過ち」をおかしてはならないと訴えています。

 アピールの全文はこちらでご覧になれます。

 なお、6月29日付け『しんぶん赤旗』の記事によれば、記者会見の席上、国際政治学者の武者小路公秀氏は、「憲法前文の平和的生存権などは変えてはならない。変えた先は、やがて徴兵制にも通じていく」と語ったということです。

多幡記

2013年6月28日金曜日

「憲法9条は日本の伝統に沿ったもの」:梅原猛さんの「思うままに」


 「九条の会」よびかけ人の一人で、哲学者の梅原猛さんが、5月27日付け『東京新聞』(夕刊)の「思うままに」欄に、憲法9条に関わる一文を寄せています。

 梅原さんは、「改憲論議が盛んであるが、私は、必ずしも政治的意見が一致しない加藤周一氏や井上ひさし氏らとともに『九条の会』の呼びかけ人に名を連ねたほどの頑固な護憲論者である」と自らを紹介し、「私はほぼ自民党を支持し続けてきたが、その自民党が憲法9条を変えるとは、長年の友人に裏切られたような気持ちである」と述べています。

 続いて、梅原さんは、「憲法9条には、あの約3百万人の日本国民及び約2千万人のアジア諸国民の命を奪った戦争に対する痛烈な反省と平和への熱い願いが込められているのでなかろうか」と指摘しています。

 また、「憲法9条は日本の伝統に沿ったものであると私は思う」と、9条を讃えています。その根拠として、「日本の歴史を見ると、平安時代に約350年、江戸時代に約250年の戦争も内乱もない平和な時代があった」ことを挙げています。

 そして、ご自分が「徴兵を受けて軍隊に入り、戦争というものがいかに残虐なものであるかを身をもって知った最後の世代である」ことにふれ、「戦争の惨禍をまったく知らない政治家によって日本が変えられることに、戦中派として強い不安を感じる」と、心配を表明しています。

 文末には、「おそらくぼけ老人の錯覚であろうが、自信ありげに颯爽(さっそう)と政治を執る人気の高い安倍首相の姿が、かつての近衛首相の姿と重なってみえる」と記しています。

 近衛首相は、日中戦争の開始、大政翼賛会の設立、日独伊三国軍事同盟の締結などにかかわって、わが国を軍国主義の道に走らせた人です。梅原さんが「ぼけ老人の錯覚であろうが」というのは、表現に婉曲さを与えるための修飾であり、「重なってみえる」のは事実でしょう。私たちは、近衛首相時代のような暗い日本を再来させることになる9条改悪を、絶対に許してはなりません。

多幡記

2013年6月27日木曜日

トルストイの作品に見る憲法9条の精神


 若い頃に好きだったロシアの小説家、レフ・トルストイの作品を最近また読んでいます。目下読んでいるのは、『五月のセワストーポリ』。1853年からロシアがオスマン帝国、そして、これと同盟を結んで参戦してきたイギリスとフランスを迎え撃って戦ったクリミア戦争の舞台となったセワストーポリの状況を描き、戦争の無意味さを訴えた3部作中の第2作で、1855年、トルストイが27歳のときの作品です。

 冒頭近くに次の言葉がありました。
外交によって解決されぬ問題が、火薬と血で解決される可能性はさらに少ない。
 これはまさに、憲法9条の精神です。先哲の教えを重んじることなく、集団的自衛権の行使を認め、憲法9条を変えて、軍事対抗主義に走ろうとする政治家たちがいることは、実に情けない状況といわなければなりません。

多幡記

2013年6月26日水曜日

「朝令暮改」の戒め:憲法96条改悪案に思う


 「朝令暮改」という言葉があります。『広辞苑』には、「朝に政令を下して夕方それを改めかえること。命令や方針がたえず改められてあてにならないこと。朝改暮変」と説明してあります。この言葉の源はいくつかあるようですが、一つは、『漢書』24巻「食貨志」第4上に記述されているものだということです。

 それは、前漢時代に晁錯(ちょうそ)が文帝に出した奏上文中の、「勤苦如此 尚復被水旱之災 急政暴賦 賦斂不時 朝令而暮改」という箇所です。これは、「(農民たちは春夏秋冬、一年中休みなく働かなければならないほか、弔問や病気の見舞いでの行き来などもあり)このように苦しいものであるうえに、水害や干害にも見舞われ、必要以上の租税を臨時に取り立てられ、朝出された法令が、夜には改められているといった有様です」と伝えている文です。

 上奏文はさらに続いていて、役人や商人が思いのままに搾取するのを制限し、農民が零落するのを防ぐべきだとの意見が述べられているということです。晁錯は、政策が変更し続け、一定せずにあてにならないような事態を戒めたのです(文献1、2)。

 命令や方針でさえしばしば改められるのは悪政であるとの戒めが古来あるにもかかわらず、国家存立の基本的条件を定めた根本法である憲法を、96 条を変えて、ときの政治勢力の都合によって容易に変更出来るようにするなどとは、もってのほかではありませんか。

文 献
  1. 朝令暮改、『ウィキペディア:フリー百科事典』[2013年3月17日(日)10:42]。
  2. 朝令暮改、ウェブサイト『故事成語で見る中国史』。

多幡記

2013年6月25日火曜日

「九条の会」メルマガ第167号:自民党参院選公約、「96条先行改憲」を隠す


 表記の号(2013年6月25日付け)が発行されました。詳細はウェブサイトでご覧になれます。運動に活用しましょう。以下に、編集後記を引用して紹介します。なお、メルマガ読者登録はこちらでできます。
編集後記~自民党参院選公約、「96条先行改憲」を隠す
 年初以来、あれだけ騒いできた「96条先行改憲」論、参院選公約で高らかにうたうかと思いきや、あれれ、「ない!」。全国からの世論の高まりで、形勢不利と見て一歩後退か。それでも、安倍首相はあきらめていない様子。世論をもっともっと盛り上げ、96条→9条改憲を必ずくい止めましょう。

2013年6月23日日曜日

『草枕』に見る漱石の反戦思想


 高校1年生のときに読んだ夏目漱石の『草枕』を、ふと再読したくなり、読んでみました。先に読んだときに興味を持ったのは、誰もがこの作品の主題と認めると思われる、主人公の画家が主張する「非人情」について、それが、本当に芸術を創造するために不可欠な姿勢だろうか、ということでした。今回もその問題に関心がありはしましたが、「改憲論」がやかましいいま、もう一つ、大いに興味を引かれたところがありました。

 それは、主人公やヒロインの「那美さん」らが、日露戦争のために応召する彼女の親戚の「久一(きゅういち)さん」を駅まで見送る最終章です。送る人たちの一人である「老人」は次のようにいっています。
「めでたく凱旋(がいせん)をして帰って来てくれ。死ぬばかりが国家のためではない。わしもまだ二三年は生きるつもりじゃ。まだ逢(あ)える。」
この言葉は、与謝野晶子の詩「君死にたまふことなかれ」に通じます。

 また、次のような記述もあります。
 車輪が一つ廻れば久一さんはすでに吾らが世の人ではない。遠い、遠い世界へ行ってしまう。その世界では煙硝(えんしょう)の臭(にお)いの中で、人が働いている。そうして赤いものに滑(す)べって、むやみに転(ころ)ぶ。空では大きな音がどどんどどんと云う。これからそう云う所へ行く久一さんは車のなかに立って無言のまま、吾々を眺(なが)めている。吾々を山の中から引き出した久一さんと、引き出された吾々の因果(いんが)はここで切れる。
「赤いもの」とは血を指していて、ここには、若い人を戦場へ送る悲しみや、戦場のむなしくも殺伐な様子が描かれています。

 さらに、末尾近くには、
那美さんは茫然(ぼうぜん)として、行く汽車を見送る。その茫然のうちには不思議にも今までかつて見た事のない「憐(あわ)れ」が一面に浮いている。
とあります。主人公を那美さんに対して、「それだ! それだ! それが出れば画(え)になりますよ」と叫ばせた「憐れ」の表情は、先に彼女が久一さんにいった「死んで御出(おい)で」という言葉とは裏腹な、彼女の真情を示したものでしょう。

 これらの記述に、軍国主義の盛んだった時代にもかかわらず、漱石が抱いていた反戦の精神がはっきり現れていると思います。彼がいま生きていたならば、「九条の会」の心強い味方だったに違いありません。

 (『草枕』からの引用は「青空文庫」版によりました。)

多幡記

2013年6月21日金曜日

「ヒューマニズムの否定、ヒューマニズムの尊重」


 私事ながら、1951年、私が高校1年生だったときの親友(中学が同じで、高校が別になったM君、いまは故人)との交換日記を別のブログに連載しています。先日掲載した1951年10月11日付けの私の日記の冒頭に、「『ヒューマニズムの否定、ヒューマニズムの尊重』、何という理知的な解釈、何と整然とした解答だろう」とありました。何についての誰の言葉かを書いてありません。

 しかし、少し前の日記に社会科の宿題として「明治憲法と日本国憲法の比較」という問題が出たことが書いてあったことから、その宿題の優れた解答(あるいはその要点)として先生が紹介したものだと思い出しました。その解答を提出したのは、学年のマドンナ的存在で、私が日記中でヴィッキーというニックネームを与えていた女生徒でした(試験でいつも最高点をとることから、勝利の女神ヴィクトリーに因んで、また、美人でもあることから、美の女神ヴィーナスにも因んでつけたニックネームです)。

 何年か前の高校同期会の折に、私が近況報告として、「湯川秀樹を研究する市民の会」や、地域の「9条の会」に関わっていることを話しました。「9条の会」といったとき、私の経歴から想像出来なかったという意味で、驚きの声を発した一人または複数の男性がいました。それに対して、すかさず、「湯川博士も憲法9条を大切と思ったでしょう」と助太刀してくれたのも、ヴィッキーでした。確かに、湯川秀樹は1965年に「日本国憲法と世界平和」というエッセイを書いて、憲法前文の平和に関わる文と第9条を讃えています。

 いま、自民党の改憲草案を読むと、それが明治憲法を彷彿させるものであることに気づきます。自民党改憲草案と日本国憲法の相違、それもまさに、「ヒューマニズムの否定、ヒューマニズムの尊重」ではないでしょうか。ヒューマニズムの否定につながる憲法改悪は、断じて阻止しなければなりません。

 上記の同期会のときには、ヴィッキーの「ヒューマニズムの否定、ヒューマニズムの尊重」を全く覚えていませんでしたが、次に彼女に会う機会があれば、その言葉を当時も感心し、いまも大いに感心していることをぜひ伝えたいと思っています。

多幡記

2013年6月20日木曜日

6/29 ピースおおさかのリニューアルに府民・市民の声を! シンポジウム


 表記シンポジウムが下記の通り開催されます。

  • 開催日時:2013年6月29日(土)13:30~16:30(開場13:15)
  • 会場:大阪市立港区民センター・ホール
  • 当日プログラム:
    • 基調提案 上杉聡(15年戦争研究会)
    • 発題者 ※2013年6月2日現在
      • 教育現場の先生から 橋口哲さん(小学校教員)
      • 歴史学研究者から 人見佐知子さん(甲南大学人間科学研究所博士研究員)
      • 博物館の経験者から 渡辺武さん(元大阪城天守閣館長)
      • 在日外国人から 方清子さん(日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク代表)
      • 平和学から 奥本京子さん(大阪女学院大学教授)
      • 空襲被害者から 伊賀孝子さん(戦災傷害者・遺族の会代表)
                 久保三也子さん(大阪大空襲の体験を語る会代表)
    • 会場からの発言、討論、集会宣言
  • 参加費:500円
  • 備考:当日時間に余裕のある方は13時からの会場設営にご協力下さい。
  • 主催:ピースおおさかのリニューアルに府民・市民の声を! シンポジウム実行委員会

 参加団体及び「よびかけ」文は案内チラシをご確認下さい。
 案内チラシ(2面あり)はこちらでダウンロードできます。

2013年6月18日火曜日

『石流れ木の葉沈むとも』:劇団きづがわ創立50周年記念公演 No. 2


 劇団きづがわ創立50周年記念公演 No. 2(第66回公演)(2013年大阪春の演劇まつり参加)『石流れ木の葉沈むとも~ダイキン労働者ものがたり~』が下記の通り行なわれます。

  • と き 6月21日(金)PM 6:45
        6月22日(土)PM 2:00、PM 6:00
  • ところ クレオ大阪西ホール
        (JR環状線&阪神/西九条駅下車3分)
  • 入場料 前売り 一般3,000円、学障シニア(65才以上)& ペア
        (夫婦・恋人)2,500円、団体割引(10人以上)2,500円
        (当日券はいずれも500円UP)
  • お問い合わせ 劇団きづがわ
        〒551-0031 大阪市大正区泉尾4-2-7
        TEL & FAX 06-6551-3481、(携帯)090-7359-7335
  • 《協賛》大阪のうたごえ協議会

 現在、わが国には、健康で真面目に働いても、年収が200万円に満たない「ワーキングプア」といわれる人びとが1千万人を超えています。しかも、従業員5千人以上を擁する大企業に働く4人に1人がその「ワーキングプア」層であるという、驚くべき状況です。この物語は、そんな非正規労働者が、なぜ急増したかを考察するドラマでもあります。(チラシ第2面の「かいせつ」による)

 上掲のチラシのイメージをクリックすると、拡大イメージが出ます。

2013年6月17日月曜日

96条の会シンポ盛況:樋口代表「改定は裏口入学」(動画リンクあり)


 憲法96条改悪に反対する研究者や弁護士などでつくる「96条の会」(代表=樋口陽一・東京大、東北大名誉教授)は、6月14日、都内で発足シンポジウムを開きました。用意された会場は開始前から満杯となり、急きょ第9会場まで増設し、1000人を大きく超える参加者が耳を傾けました。

 基調講演した樋口氏は、改憲手続きの要件を定めた96条の改定について「裏口入学にあたるやり方で、仮に改憲が成功しても一国の基本法としての正統性を持つことは到底できない。政治家としての、その発想自身が批判されなければならない」と指摘し、また、「96条は、正当に選挙された国会で3分の2以上の合意が得られるまで熟慮と議論を尽くす、それでもなお残るであろう3分の1の意見も含めて十分な判断材料を国民に提供することを国会議員の職責にしている」と述べました。

 シンポジウムでは、小森陽一、長谷部恭男・両東大大学院教授や岡野八代同志社大教授、山口二郎北海道大大学院教授、日弁連の山岸良太副会長らが発言しました。(以上、6月16日付け『しんぶん赤旗』の記事をもとにしています。)

 シンポジウムの録画(全2時間28分)は、こちらでご覧になれます(4分40秒辺りで開会、45分まで基調講演、49分辺りからパネルディスカッション)。

(文責・多幡)

2013年6月15日土曜日

赤塚不二夫、永井 憲一共著『「日本国憲法」なのだ!』改定新版が出る


 30年前の1983年4月に発行された表記の本の改定新版について、6月12日付け『朝日新聞』の「天声人語」欄がふれています。
小学校高学年なら十分読める内容だ▼「日本はもう戦争はいたさないのだ!」とバカボンのパパが宣言する。「国の政治は国民が信用してまかせた議員がするニャロメ!」とニャロメが言う。赤塚マンガの主役、脇役が総動員で憲法を語る▼永久不可侵のはずの基本的人権も、「いつも努力しないとなくなってしまうかも」。アッコちゃんが鳴らす警鐘は今も響いている。

などと紹介しています。

 出版元(草土文化)のウェブサイトには、
戦中・戦後に青少年期を過ごした、漫画家・赤塚不二夫氏と法学博士・永井憲一氏の実感を通して、日本国憲法の素晴らしさを的確に、わかりやすく描き出しており、30年を経たいまなお、現在の感覚にも通ずる新鮮さを持っています。憲法論議が急浮上している現在の状況下、学生、子どもを持つ若い親世代をはじめより多くの人びとに、いま一度日本国憲法に触れてもらい、わたしたちが暮らす現在、そしてこれからの日本について考えるきっかけになれば幸いです。

と記されています。バカボン一家が憲法96条、同9条などを守る力強い味方になるといいですね。

多幡記

2013年6月12日水曜日

安倍首相に読んで貰いたい記事、そして私たちも覚えておきたい事実


 安倍首相は4月23日の参議院予算委員会で、「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と述べました。6月11日付け『しんぶん赤旗』の「朝の風」欄はこの発言に対し、「日中共同研究の成果を忘れたのか」と題して、学界での事実を一つ紹介しています。その記事の本論部分は次の通りです。

 第1次安倍内閣の2006年に日中歴史共同研究を行なうことが合意された。2010年1月に公表された報告書は、時期ごとに日中関係を軸にしたテーマを設定し、日中の研究者がそれぞれ執筆した論文を併載している。
 日中戦争を扱う近現代史第2部第2章のタイトルは、日本側の論文が「日中戦争—日本軍の侵略と中国の抗戦」、中国側の論文が「日本の中国に対する全面的侵略戦争と中国の全面的抗日戦争」となっている。表現に違いはあるが、日本または日本軍の「侵略」としている点は共通している。この章では、平頂山事件、南京虐殺事件、重慶爆撃、三光作戦、強制連行などの具体的史実についても、日中双方がかなり詳しく記述している。
 日本側研究者の人選は政府主導で進められたので、座長は北岡伸一氏*が勤めたが、それでも日中戦争を中国への侵略とみる点では一致している。安倍首相は自分がはじめた共同研究の成果を忘れたのだろうか。

 * 引用者注:小泉首相の私的諮問機関「対外関係タスクフォース」委員、日本版NSC設置検討のために設置された「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」委員、日本の集団的自衛権保持の可能性について考える安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」有識者委員などを歴任した人である。

 作家の赤川次郎さんも、『図書』6月号のエッセイ「西部劇における人生の汚点」において、安倍首相の戦争観や武力対抗主義を念頭において、次のように記しています。

 鶴見俊輔さんは「戦争に負けた国は戦争を失うことができる」と言ったが、敗戦によって自国の歴史を批判的に振り返ることこそ、戦争の犠牲者への一番の追悼となる。
 かつて、フォークランド紛争での勝利に狂喜するイギリス国民の映像に、私は「いまだにイギリス人は大英帝国の夢が忘れられないのか」と愕然とし、しばらくは好きなアガサ・クリスティさえ手に取ることができないほど落胆したものだ。国内での不人気を戦争で取り戻す。歴史はうんざりするほどの単純さでくり返すのだ。

 過去の侵略の否定や、領土問題に対して武力増強で対応しようとする姿勢などは、日本を「美しい国」にするどころか、世界から疎まれる国にするだけです。

多幡記

2013年6月10日月曜日

「九条の会」メルマガ第166号:草の根からの世論をさらに高め、改憲の動きを封じましょう


 表記の号(2013年6月10日付け)が発行されました。詳細はウェブサイトでご覧になれます。運動に活用しましょう。以下に、編集後記を引用して紹介します。なお、メルマガ読者登録はこちらでできます。
編集後記~「九条の会のみなさんへ」の訴え受けて
 5月17日に記者会見で発表された呼びかけ人の大江さん、奥平さん、澤地さんからの訴えは、いま全国各地の「九条の会」の皆さんに届けられ、運動の活性化が各所で見られます。96条改憲を手始めに9条など憲法改悪を企てる安倍政権ですが、自民党や改憲勢力のなかからも批判が強まるなど、難問山積です。一部メディアは安倍首相に「動揺するな」と叱咤しています。さらなる草の根からの世論の高まりを実現し、改憲の動きを封じたいと思います。

2013年6月8日土曜日

水仙

詩・浅井千代子(本会世話人)



M さんから
水仙を頂いた

玄関の小さな花瓶に挿した
TV の上に活けた
トイレ洗面所にも活けた
ほのかな香りの中に
M さんが居る

古い長いお付き合い
三十代の終り頃
息子が同級生だった
母子家庭の M さんは
三人の子育てをしながら
保育所をやって頑張っていた
いまも続けているという

M さんの水仙から元気を頂く

『異郷』第24号(2013年4月)から
写真・多幡達夫

2013年6月6日木曜日

みなさん知っていますか?:自民党憲法改正案のこわさ—「明日の自由を守る若手弁護士の会」ウェブページから


 「明日の自由を守る若手弁護士の会」の活動について、本ブログの先の記事で簡単に紹介しました。今回は、同会のウェブサイト(ブログ形式)中の「会の立ち上げにあたって」と題するページに、2012年4月に自民党が発表した憲法改正案が、民主主義国家であれば当然に保障されると考えられてきたものや、戦後70年近くにわたって日本に当たり前に存在したものを、どのように大きく変えようとしているかの例を、分りやすく記してありますので、それを以下に紹介します。次の通りです。



  • たとえば、「すべて人間は生まれながら自由・平等で、幸福を追求する権利をもつ」という考え方を否定して、国が私たちの権利を容易に制限できること。
  • たとえば、「国家権力を縛る憲法」から「国家が人を縛る憲法」へと変貌していること。
  • たとえば、戦力の放棄をやめ、強大な権限をもつ「国防軍」の創設を宣言し、他国の戦争に参加できる態勢を整えること。
  • たとえば、「緊急事態」には、内閣が私たちの人権を大幅に制限できること。

 知っていますか? もしこのような改正案が現実のものとなったとき、私たちの生活・未来が大きく変わってしまう可能性があるということ。

 憲法は、普段の生活には顔を出さないけれど、実は私たちが自分らしく生きること、幸せに生きることととても深く関係しています。私たちは、自分たちの未来を自分たちで決められるこの社会を守るために、自民党の憲法改正案の内容とその怖さを知ってもらいたいと思っています。そして、一人ひとりに考えてもらい、みなさんに話し合ってもらうことを願っています。



 なお、同会作成のリーフレットには、これらのこわさについて、イラスト入りで詳しく説明してあります(上に掲載のイメージ参照。イメージをクリックすると拡大イメージをご覧になれます)。リーフレットの注文については、こちらをご覧下さい。

多幡記

2013年6月4日火曜日

「明日の自由を守る若手弁護士の会」:自民党改憲草案のこわさ考えようと行動(動画あり)

 表記の会が今年1月、自民党改憲草案(昨年4月発表)に危機を抱いた若い弁護士たちによって結成され、「憲法が変ってしまうかもしれないことを知ってほしい」と同世代に呼びかけ、行動していることが、昨6月3日付け『しんぶん赤旗』に報道されました(5月3日に NHK ニュースでも紹介されたそうです)。

 同会では、リーフレット『憲法が変わっちゃったらどうなるの?~自民党案シミュレーション~』や紙芝居『王様を縛る法~憲法のはじまり~』を作って、多くの人々から反響を得て、購入希望をメールで受付け配信しています。下に You Tube に掲載されている紙芝居動画を引用します。


 なお、リーフレットと紙芝居申し込み専用のアドレスは下記の通りです。
  • leaflet.asuwaka☆gmail.com(☆を@に変えてください)
  • kamishibai.asuwaka☆gmail.com (☆を@に変えてください)

 また、次のリンクをクリックすると、それぞれ、会のウェブページ、フェースブック、ツイッターのページが開きます。

多幡記

2013年6月2日日曜日

9条改憲に狂奔する為政者たちに痛言:『図書』誌「こぼればなし」欄


 岩波書店発行の『図書』2013年6月号巻末の「こぼればなし」欄は、同書店がさる4月に刊行を完結した『世界史史料』(全12巻)に関連して書き始めています。そして、戦後の新教育発足のさい高校社会科に「世界史」が設けられることになった背景、当時の日本人の日本国憲法についての確信、日本における平和と民主主義の歴史、9条改憲に狂奔する為政者たちへと話を進めています。以下にその概略を紹介します。

 まず、「世界史」教科の設定は、「敗戦後、もう二度と戦争をしないと決意した日本国民が、世界的視野をもった子どもたちを育てて、世界に積極的に働きかけていく以外に、日本の平和を確保する道はないと実感していた、という事実」に後押しされたもので、「平和憲法と深いつながり」があると指摘しています。

 次いで、国際連合憲章前文の平和に関する箇所を引用して、この憲章が「日本国憲法、とりわけその前文や第九条と深い呼応関係に」あり、「これらこそ、二〇世紀の『言語に絶する戦争の惨害』という犠牲を払って人類がつかみとった、かけがえのない成果だと、当時多くの日本人が確信して」いたことを述べています。

 続いて、「敗戦後日本を占領していた米国は、当初こそ日本の民主化と非軍事化を押し進め」ましたが、「日本を去る前に方向を逆転させた。…にもかかわらず、平和と民主主義と言う理想は、日本に根をおろした」と、あとのカッコ内の言葉をジョン・ダワー氏の『敗北を抱きしめて』から引用して説明しています。

 これらの流れを受けて、「この歴史をなかったことにして、いま九条改憲に狂奔する為政者たちは、自分たちが憲法にふさわしい存在になるのではなく、憲法を自分たちにふさわしい存在に引き下げようとしているとしか言いようがありません」と結んでいます。

 痛快な言葉ではありませんか。

多幡記