2013年8月17日土曜日

「集団的自衛権」:米国の発案で国連憲章に入るも、国連の「集団安全保障」の精神に反する


 安倍政権は、戦争放棄と戦力不保持を掲げた憲法9条を変え、日本を再び「海外で戦争する国」に作り変えようとしています。その一歩として、歴代政権が「憲法上できない」としてきた「集団的自衛権」の行使を、年内にも可能にしようとしています。

 「集団的自衛権」は、1945年に署名・発効した国際連合(国連)憲章の第51条において初めて明文化された権利です。国連は、第1次世界大戦後にできた国際連盟の「集団安全保障」の仕組みの不徹底を改め、本格的な「集団安全保障」体制を確立することを目指して、第2次世界大戦後に発足しました。具体的には、国連憲章で個々の加盟国に対して武力による威嚇・武力の行使を禁止し、侵略発生時には、安全保障理事会が制裁措置を決定し、そのもとに各国が行動することになっています。

 ところが、戦後、世界の覇権を狙っていた米国は、国連の統制を受けないで軍事行動をとることができるように、「集団的自衛権」を発案し、ソ連も賛成して、国連憲章に上記の第51条が盛り込まれました。その結果、戦前をはるかに上回る規模で、軍事同盟の網の目が張り巡らされ、多くの国が「集団的自衛権」を口実に、米ソ両国が引き起こした侵略戦争に動員されました。これは国連がめざす「集団安全保障」に真っ向から反する状況なのです。

 安倍政権は、国連の正しいあり方よりも、米国との軍事同盟である日米安全保障条約を尊重して、米国の求めるままに、日本の軍隊が海外で戦争できるようにすることを目指しているのです。なんと浅はかな発想ではありませんか。

 (『ウィキペディア』の「集団的自衛権」の項と、『しんぶん赤旗』の2013年8月16日付け記事「集団的自衛権 Q&A 1」を参考にしました。)

 後日の追記:『ウィキペディア』英語版の "Chapter VII of the United Nations Charter" (国連憲章第7章)中の "Article 51"(第51条)の項には、次のように、同条について批判のあることが記されています。
"Article 51 has been described as difficult to adjudicate with any certainty in real-life situations (Glennon, Michael J. (2001-2002), Fog of Law: Self-Defense, Inherence, and Incoherence in Article 51 of the United Nations Charter, The 25, Harv. J.L. & Pub. Pol'y, p. 539)."[第51条は、現実の状況のもとでは、確実に裁定することが困難であると述べられている(Glennon, Michael J. の論文「法律の霧:国連憲章第51条における自衛、一貫性、および矛盾」参照)。]

多幡記

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