2013年8月12日月曜日

胸に手を置いて

詩・浅井千代子(本会世話人)



今まで一度も富士山に登った事もない人間が言うたら
 おかいしやろか
小さい時昔の東海道線で東京の往き帰り
汽車の窓から富士山眺めただけの人間が
言うたら生意気やろか
母の故郷 山梨県へ小学六年生の夏休み
従姉妹と訪れ
山中湖のほとりで富士山を眺めながらおにぎりを食べた
 思い出しかない人間には
言う資格なんかないのやろか

今盛んに
富士山を世界文化遺産に言うて躍起になってはる人
 ようさんいてはるけど
そらわたしもそうなったら嬉しい
けど一寸待てよと言う声が心の底の方から
聞こえるんや
なんで言うたら
富士山麓の東と北には
自衛隊と米軍共同の軍事演習場が広がっていて
常に実戦さながらの戦闘訓練が行われ
戦車はもとより今後はオスプレイも参加?するらしい
勿論実弾は富士山麓めがけて打ち込まれていると言う
江戸時代富士山をこよなく愛し称え
その名を世界に知らしめた
北斎や広重
あの世でさぞさぞ嘆いてはるやろなぁ

樹海に囲まれ
人知れず存在する戦争化粧の別の顔を持つ富士山
世界文化遺産なんて恥かしい
情けのうて悲しい
平和の象徴であってこそと思うのは
わたしのエゴか?

胸に手を置いて
問いつづけている
『異郷』第25号(2013年7月)から
絵・多幡達夫

 注:富士山は、2013年6月22日、遺憾ながら「戦争化粧の別の顔を持つ」まま、世界文化遺産に登録されました。

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