2013年12月23日月曜日


詩・浅井千代子(本会世話人)
雨が降っています
経験したことのない大雨だそうです
我が家では万両の植木鉢が転げ落ち
生垣の落ち葉が掃いても掃いても限りがない
でもTVの映像は目を覆うばかりです

災害地は
山が崩れ道は消え
堆積した土砂の上に落下した大木が横たわる
増水し溢れた川の流れに
抉られたコンクリートの橋が木の葉のよう
道路は滝のように降る雨と
下水管から噴き上る水で大川となり
渦を巻いている
その流れにさらわれ屋根や車が粗大ゴミ同様に浮き沈みしてゆく
高速道ではブレーキが利かなくなった車が風雨に翻弄されている
まるで天が怒り狂っている有様

あの春雨 梅雨 秋雨 氷雨の
日本独特の風情は何処に行ってしまったのか
人間が進歩 発展 開発などと
自然を侮った報いでしょうか
降り止まぬ雨が
哀しくも激しい音楽を奏でている
『異郷』第26号(2013年10月)から
挿絵・多幡達夫

2013年12月22日日曜日

「黙殺された抵抗~映画『標的の村』」:三上智恵監督へのインタビュー[YouTube 動画]


 YouTube 動画「黙殺された抵抗~映画『標的の村』」(2013年8月8日掲載、長さ19分37秒)をここに引用して紹介します。動画の下の説明も YouTube ページからの引用です。『標的の村』予告編の短い映像に続いて、同映画を作成した三上智恵監督へのインタビューが始まります。動画制作は OurPlanet-TV。

2012年9月29日沖縄。オスプレイ配備前日のアメリカ軍普天間基地ゲート前には市­民が集まり、車を並べ、22時間にわたって完全封鎖した。強制排除に乗り出した警察は­次々と市民やジャーナリストを排除。しかし、この前代未聞の出来事は、全国ニュースか­らは黙殺された。

その一部始終を記録した地元テレビ局・琉球朝日放送は、沖縄県東村高江の住民たちに寄­り添いながら、沖縄の抵抗の歴史を紐解いてゆく。琉球朝日放送のアナウンサーで、監督­の三上智恵さんにお話を伺う。

ゲスト:三上智恵(映画『標的の村』監督、琉球朝日放送アナウンサー)

映画「標的の村」ウェブサイトは

こちら

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Category: News & Politics
License: Creative Commons Attribution license (reuse allowed)

(文責・多幡)

 追記:三上智恵さんは、たまたま、きょう12月22日付けの朝日紙「どうする? 秘密法」欄で、軍機保護法があった太平洋戦争中、沖縄の住民が軍人と同じ屋根の下で暮らし、軍事機密に通じていたため、沖縄戦で敵が上陸し捕虜になって情報が漏れることを恐れた日本軍から「スパイか」と切りつけられ、自決に追い込まれたことを述べています。そして、特定秘密保護法は軍機保護法の再来であり、いまも米軍や自衛隊と隣接して生活する沖縄の住民が、いつまた不都合な存在となり、処罰の対象にされるかと危惧していること、人の命よりも先に守るべき情報などあるはずがないことなどを訴えています。

2013年12月20日金曜日

沖縄・宮古島から「九条の碑」についての緊急アピール

 下記のアピールがフェイスブックで紹介されていましたので、ここに転載し、皆さんのご協力をお願いします。



◆沖縄・宮古島からの緊急アピール

 「九条の碑」を撤去させないために、あなたの力を貸してください!!

 私たちが住む宮古島でとんでもない動きが明らかになりました。
 みやこ九条の会など市民有志でつくる実行委員会が募金を呼びかけて2007年に建立し宮古島市に寄贈した憲法「九条の碑」を市が撤去しようとしています。
 碑は市内のカママ嶺公園内にあり「非戦の誓い」の文字と九条の条文が刻まれています。今年10月下旬に塗料で落書きされたのですが、市は碑を修復しようとしません。
 それどころか、長濱副市長は市議会で12月16日、「碑の維持管理費の支出は市議会の了解を得なければいけない。了解が得られない場合は撤去を含めて考える」とのべました。
 寄贈後は碑が市の財産になっているにもかかわらず撤去を検討する副市長の暴言はとうてい許すことができません。
 私たちは「九条の碑」を撤去させないため、全国的なキャンペーンを始めようと思います。
 全国のみなさんに訴えます。

 宮古島市と宮古島市議会に、全国から「九条の碑を撤去しないで」という声を届けてください。
 下記は宮古島市の組織のページです。市長部局や議会事務局をクリックして、声を届けてください。

みやこ九条の会 会員 清水早子 2013・12・18



 なお、以下の連絡先を参考にして下さい。

 下地 敏彦・宮古島市長へは:
  企画政策部 秘書広報課
  電話:0980-72-3750 FAX:0980-73-1645

 宮古島市議会へは:
  議会事務局
  電話:0980-72-3762 FAX:0980-73-0944

 本会としては、以下の文面で、宮古島市長と宮古島市議会宛に訴えを送りました。

 いま憲法九条を守ることこそが、日本にとって真の防衛力になるのです。安倍政権の戦争する国への突進ぶりに惑わされないで、憲法九条を大切にしなければなりません。宮古島市に寄贈された「九条の碑」を撤去しないで下さるよう、切にお願いいたします。
 福泉・鳳地域「憲法9条の会」(大阪府堺市)
代表・多幡 達夫

2013年12月18日水曜日

それは破滅の道:戦争する国へ突進する安倍政権


 安倍政権は2013年12月17日の閣議で、外交・安保政策の中長期的な指針となる初の「国家安全保障戦略」を決定しました。その中では、「専守防衛」に代えて、集団的自衛権の行使をにらんだ「積極的平和主義」を「基本理念」として明記しています。また、世界の「主要プレーヤー」としてアジア太平洋地域全域、地球規模で軍事的関与を強めていくことも宣言しました。さらに、中国への対抗姿勢を前面に打ち出しています。この「戦略」は、戦後日本の安全保障の行き方に大きな転換をもたらすものです。

 安倍政権はこの「戦略」を踏まえた新「防衛計画の大綱」も同時に決め、陸海空3自衛隊を一体的かつ迅速に運用する「統合機動防衛力」を掲げました。日米同盟については、「わが国自身の能力を強化することを前提として、日米防衛協力をさらに強化」するとしました。武器輸出を禁止した現行の「武器輸出三原則」については、「新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定める」と廃止を明記しました。北朝鮮の弾道ミサイル対応では「発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる」とし、敵基地攻撃能力保有に道を開きました。

 同日の閣議では、新たな「防衛計画の大綱」に基づく、2014年度から5年間の「中期防衛力整備計画」も決定しました。総額24兆余りで、2010年に民主党政権が策定した前中期防(2013年1月に廃止)と比べ、1兆1800億円増の大軍拡計画となっています。装備面でも、垂直離着陸機MV22オスプレイや滞空型無人偵察機、機動戦闘車など新兵器の導入が目白押しです。(以上、『しんぶん赤旗』の記事を参考にしました。)これを報じた12月17日午後7時のNHKニュースの画面は、兵器が乱舞する空恐ろしいものでした。

 世界の流れに逆行し、日本国憲法の精神に反する時代錯誤の軍事力強化の政策は、日本を世界から孤立させ、国を破滅に導く以外の何ものでもありません。安倍政権の「戦争する国」作りへの反対の声を大きく挙げましょう!

多幡記

2013年12月16日月曜日

イソップ寓話のコウモリのように:日本だけが核兵器に関して相いれない二つの共同声明に賛同


 2013年12月16日付け朝日紙大阪版34面に「別の核声明 日本賛同:被爆者ら戸惑い広がる」と題する記事が掲載されました。この記事はインターネット上には見当たらなくて、代りに、2013年11月23日付けの「(@ニューヨーク)核の非人道性うたう二つの共同声明」という関連記事が見つかりました。後者は朝日紙のニューヨーク支局特派員リポートで、春日芳晃氏が「自分自身の反省を込めて、先月から書かねばならないと思っていた話題を取り上げたい」として書いています。こちらの記事にしたがって、二つの共同声明の相違と、両方に賛同することが何を意味しているかを紹介します。

 2013年10月21日、軍縮と安全保障を話し合う国連総会の第1委員会で、「核兵器の人道上の影響に関する共同声明」という題名で、異なる内容の二つの声明が発表されました。一つはニュージーランド(NZ)、もう一つはオーストラリアが起草したものです。

 NZ起草の声明については、さまざまなメディアで大きく報じられました。「核兵器がもたらす壊滅的な人道上の影響を深く懸念」し、こうした壊滅的な影響は広島、長崎の使用時から明白だったとした上で、「核軍縮に向けた全てのアプローチと努力を支持する」と表明し、さらに、「いかなる状況においても、核兵器が二度と使用されないことが人類の生存にとって利益」とし、「核兵器不使用を保証する唯一の方法は廃絶である」と宣言しています。NZは、同じ趣旨の共同声明を昨年5月から国際的な討議の場で発表し続け、今回が4回目です。

 他方、オーストラリア起草の共同声明は、今回初めて発表されたものです。「核兵器爆発による即時および長期にわたる破壊的な人道上の影響は明らかな懸念である」とし、核兵器の非人道性を訴えるところまではNZと同じです。ただし、「安全保障と人道の両面について認識がなされることなしに、核兵器を禁止するだけでは、核廃絶は保証されない」と明記し、安全保障問題には触れることなく、核兵器の非人道性だけに焦点をあてて核兵器禁止に向かおうとする動きとは一線を画す内容になっています。さらに、NZなど16カ国が「共同声明の要」と位置づける「いかなる状況…利益」のような、核兵器の不使用にまで踏み込んだ表現は皆無です。外交関係者の間では、「NZのものは将来的な核の非合法化も視野に入れるものだが、オーストラリアのものは核兵器禁止へ向かう流れを止めようとするもの」とみられています。

 NZの声明には、同趣旨のものとしては過去最多となる125カ国が賛同しました。他方、オーストラリアの声明には、米国の「核の傘」の下にある北大西洋条約機構(NATO)加盟国を中心に17カ国が賛同しました。この二つの共同声明に賛同した国の中で、両方に名を連ねたのは日本だけです。

 過去3回のNZの声明には「いかなる状況……利益」の部分が米国の「核の傘」に頼る安全保障政策と整合性がとれないとして、賛同を見送ってきた日本が、今回これに賛同したのは、「人類の願望から発想された政治的な意志、メッセージ」ととれる修正を盛り込んだことで、日本の安全保障政策を縛るものではないと解釈したからです。さらに、「全てのアプローチ支持」の文言も加えたことで、「米国の核兵器に守ってもらっているが、少しずつ核兵器を減らすように促す」とする日本の立場にも配慮した内容に修正できたとも判断したのです。こうした日本の対応に対して、欧州のある外交官は「二つの声明は相いれない性質のもの。両方にOKという日本の姿勢は矛盾している」と否定的です。

 以上のような紹介をしたあとで、春日特派員は「私自身も反省がある。共同声明発表時は、日本が初めて核兵器の非人道性と不使用を訴えるNZの声明に賛同することだけに目を奪われ、オーストラリアの声明にも賛同することの意味合いもあわせて深く考えることができなかった。不明を恥じるほかない」と記しています。

 日本政府は、NZの声明に賛同することによって、米国の核の傘から抜け出る決意をしたのではないのです。原爆の惨害を被り、率先して核兵器廃絶を唱えるべき国が、核の傘に頼っているとは情けないことではありませんか。そしてまた、相いれない二つの声明にともに賛同したとは、イソップ寓話の中の、鳥と獣の戦いの間にあって、情勢によって都合のよい方につこうとしたコウモリにも似ているではありませんか。 

多幡記

2013年12月15日日曜日

戦争体験を語る:佐藤鹿津さん(1)

「15歳で一人っきりに」


佐藤鹿津さん(鳳南町)

一、母の苦労

 私は昭和4年1月、高知県で4人の子どもの末っ子として生まれました。2人の兄と1人の姉がいました。父は代書の仕事をしていたようですが、私が10歳の時に脳溢血で急死し、記憶にはほとんどありません。父の死後は母が縫物などいろんな仕事をして、苦労をして育ててくれたようです。食べ物には不自由することはありませんでしたが、着るものでは、いい服作ってくれないし、貧乏になったのかなと感じた記憶があります。

 子どもだったので当時のことはよく分かりませんが、父は土地を持っていたようで、小作料でしょうか、お米だけは近所の人がよく持ってきてくれてました。この土地が兄や私たちの学費や生活費になっていたのかもしれませんが、そこはよく分かりません。野菜や魚などはあまり食卓に並ばなかったように思いますが、そんなことは今考えてのことで、当時は気づいてもいませんでした。

 お陰で悩んだり苦しんだりすることもなく、女の子らしくゆったりと育ててもらいました。私は幼いころから肉や魚が嫌いで、今でも食べませんが、6年生のある日「肉が食べたい!」といったら、母が喜んでくれて、手に入りにくい時代なのに遠くの町まで買いに行ってくれた記憶があります。わがままな私なのに、大切にしてくれていたんだなと思います。

二、戦争一色、勉強もできない

 女学校へ入学した年に太平洋戦争がはじまりました。戦争一色になって、英語はアカン、あれはイカンで、ほとんど勉強もできず、勉強してても百姓の家から「手伝いがほしい!」と言われたら、勤労奉仕ということで、勉強をほっといて、稲刈り麦刈りなど手伝いに行ったりして、ほとんど授業はなかったです。親が苦労して月謝払っているのに、これでいいのかなと疑問に思っていました。また、出征兵士の見送りや英霊のお迎えには、日の丸の小旗をもっていきました。まだ子供でしたからその意味も感じてはいませんでした。

三、兄が軍隊へ、母は亡くなり…

 兄の話ですが、どうしても早稲田大学にいきたいといって、父親に談判して了解をとり、入学しましたが、途中、父の突然死があり、詳しくは知りませんが、その後は母の手一つで、兄も母も相当苦労したと思います。戦争をしている時代だったからでしょうか、繰り上げ卒業をして会社で働いていたようです。昭和18 (1943) 年の夏、高知の家に帰って、しばらくして軍隊に入りました。朝倉の連隊へ母と面会に行ったとき、当番の兵隊さんが「一重の軍服を着ているから、行くのは南方ですよ」と教えてくれました。

 母は心配しましてね、過労もあったと思いますが、体をこわし病気になり、その年の暮れに亡くなりました。もう一人の兄と姉も結核などの病気で、すでに亡くなっており、私は15歳で一人っきりになってしまいました。母の亡くなった日に、兄から「南方にいる」という手紙が届いたんです。近所の人たちのお世話で母の葬儀をすませ、一人の生活となりました。いとこが時々様子を見にきて「よう生きてる、よう生きてる」と心配してくれていましたが、淋しいとか怖いとかは考えませんでした、生きていくにはそうせざるを得ませんでしたから。必死だったんだと思います。

(つづく)

(インタビュー・2013年2月10日、小倉・荒川)
『憲法九条だより』第22号(2013年12月10日)から

2013年12月14日土曜日

鍋料理

浅井千代子(本会世話人)
お正月が近いし寒いし 
皆にご馳走をと    
アベちゃん肝入りの鍋料理
材料調味料一切秘密で 
コトコト音を立てている
料理当番はいつも調子よく立ち廻る 
コウモリ其の他永田町の連中     
加えて大きな顔のブレナベも     
急ぎに急いで     
調理場はまるで戦争前夜
その上これも秘密で  
大きな声でいえないけど
なんでも食べた後が問題なんだって 
そう——皆ロボットになるのよ     
おお! 怖       
シーッ! 
こんな秘密漏らして  
わたし 捕まるヮ

井崎孝子(本会世話人)描く

『憲法九条だより』第22号(2013年12月10日)から

2013年12月13日金曜日

本会主催第7回学習会「オスプレイが配備された沖縄から 日本の平和を考える」への感想


 元宜野湾市長・伊波洋一さんを招いて、2013年11月10日に開催した学習会「オスプレイが配備された沖縄から 日本の平和を考える」(こちらに速報記事)には、雨の中、約90名の参加があり、会場で配布した感想用紙を使って、たくさんの感想が寄せられました。その一部をここに紹介します。

 (1) 沖縄の現状がよくわかりました。核抑止力のために日本政府は米軍基地を置いているだけと思っていたがそうではないのだ。

 (2) きょう、伊波さんのお話を聞けて本当によかった。また続きを聞きたいです。すごくわかりやすかったです。

 (3) 2006年から福泉・鳳憲法9条の会が発足されて、世話人の方々が毎月会議を開かれ、毎月9の日宣伝を地域に深く根ざして行われているのは、すばらしいことだと深く感銘いたしております。さらに、『9条だより』には戦争体験等々が連載されていつも楽しみにして読んでいます。戦争反対、思想信条をこえて、人間として「[戦争は]だめだ」と、その実体験から一人ひとりの思いが心に伝わってきます。学習会に参加する中で、日頃忘れていた9条の大切さを深く考えさせられています。きょうの伊波さんのお話の中で、[面積が]日本の0.6%の沖縄に、在日米軍専用基地の74%がおしつけられているのは、本当に許せないと思いました。

 (4) 沖縄のおかれている状況、日本政府の対応のひどさ、すごくよくわかりました。沖縄の問題は日本全体の問題。絶対に基地はいらないと、あらためて思いました。すばらしい講演ありがとうございました。

 (5) 沖縄の方々の70年間の御辛苦に、内地に住むものとして申し訳ない気持ちで一杯です。いよいよ戦争の気配が濃厚になってきました。あの戦争後の70年の平和はどうなりましょうか? 一重に平和憲法に守られてきましたのに…。先の大戦に戦場で戦ったものとして反戦平和の戦争語り部になる以外、自分に何もできないのが残念です(89歳男性)。

 (6) 伊波さんのとつとつとした口調の中に、沖縄に対する熱い思いと日本の平和を守ろうという強い意思が伝わってきました。伊波さんの気さくなお人柄にも惹かれました。

『憲法九条だより』第22号(2013年12月10日)から

2013年12月12日木曜日

戦争への道をねらう秘密保護法:本会機関紙『憲法九条だより』第22号


 年に2、3回発行して会の支持者の方々に配布したり、「憲法9条を守ろう」の9の日宣伝・署名活動の際に利用したりして来た本会機関紙『憲法九条だより』を、今年は4回発行し、号数が22に達しました。12月10日付け今号のトップ記事「戦争への道をねらう秘密保護法」を以下に転載して紹介します。その他の記事も、順次、本ブログで紹介する予定です。



戦争への道をねらう秘密保護法

 「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」の4分野について、国が一方的に「特定秘密」に指定し、これをもらしたり、もらすことをそそのかしたりすると、懲役10年以下という厳罰を与える「特定秘密保護法」。秘密を取り扱う人はプライバシーを調査されます。調査範囲は家族や友人にまで広がります。「秘密は戦争の始まり」は歴史の教訓です。

 『朝日新聞』の連載「異議あり 特定秘密保護法案」の3回目(11月24日付け)に、東京大名誉教授で96条の会代表の樋口陽一さんが登場し、「3・11の原発災害で私たちは『原発は安全』という神話にだまされていたことを知った。今後、政府のうそにだまされず、主権者として公のことがらの基本を動かし、未来への責任を果たすため、国民には問題の所在を『知る義務』がある。それを邪魔するのが、今回の特定秘密保護法案」と語っています。これに先立つ氏の冒頭の言葉には、「国民主権の憲法となり、国民自身が政治を動かす立場にある今こそ私たちには『だまされない責任』があると言いたい」ともあります。この言葉はいま、私たちがこぞって、危険な特定秘密保護法案に反対しなければならないという、氏の痛切な思いを表したものではないでしょうか。[転載時の注:この段落は本ブログの11月24日付け記事を利用しています。]

 『毎日新聞』(11月30日付け)は、森雅子特定秘密保護法案担当相の答弁がぶれている状況を報じ、拙速審議を批判していました。おなじく『毎日新聞』の連載「特定秘密保護法案に言いたい」(12月1日付け)で、精神科医の香山リカさんは、「内容や範囲が不明確な『秘密』という言葉が一人歩きし、『国にとって都合の悪いことを知ろうとしたり、話したりするだけでやばい』という雰囲気だけが広まって、国民の心理が自動的に萎縮してしまうのではないか、(中略)最終的にだれもものを言わなくなる。そうした『沈黙のらせん』がもっともこわい」と発言しています。

 このような特定秘密保護法案が強行採決で可決されたことに断固抗議します。私たちは戦争への道を許すことはできません。あらゆる場面で反対の声をあげていきましょう。[転載時の注:この記事は法案の参議院での採決以前に準備したものだったので、見出しの一部と本文の最終段落を、急きょ変更して印刷する運びとなりました。]



 付記:2013年12月11日付け朝日新聞の「どうする? 秘密法」欄において、憲法研究者で「九条の会」呼びかけ人の一人の奥平康弘さんは、1952年に成立した破壊活動防止法(破防法)の本来の狙いが団体規制だったにもかかわらず、戦前の特高警察が再現されるのではと危険を感じた労働組合や学術団体、野党が強く反対した結果、この規制が一度も適用されていないことについてふれています。そして、「今回の[特定秘密保護法への]反対の声も法律乱用の歯止めになると思います。同時に絶えず監視していくことが必要です。公務員や記者らが秘密漏洩(ろうえい)罪に問われたとき、知る権利を保障する憲法21条に反するとして司法の場で論陣を張れるはずです」と述べています。私たちは、この奥平さんの言葉に勇気づけられて、秘密保護法廃止の運動をぜひ続けて行かなければなりません。(多幡)

2013年12月11日水曜日

12/14 秘密保護法の撤廃スタート集会(大阪・堺)


 12月13日(金)にも交付の運びとなる「秘密保護法」の「撤廃スタート集会」が次の要領で開かれます。

  • 日 時:2013年12月14日(土)14:00~
  • 会 場:サンスクエア堺第1会議室(JR阪和線「堺市」駅下車徒歩5分)
  • 講 演:特定秘密保護法の本質と撤廃に向けて—たたかいはこれから—
  • 参加費:無料(事前申込み不要)
  • 講 師:大江洋一さん(大阪弁護士会秘密保全法制対策大阪本部本部長代行・堺市民懇代表世話人)
  • 主 催:自由と自治・進歩と革新をめざす堺市民の会(堺市民懇)[本集会は、同会の「第31回平和と民主主義を語るつどい」に当てられています]
  • チラシ:こちらからダウンロードできます

 国民の過半数が反対し、国民の8割が慎重審議を求めたにもかかわらず、自民・公明の採決強行によって特定秘密保護法が成立しました。この法律は、日本国憲法に掲げる国民主権や基本的人権を蹂躙し、国民を重罰で脅す違憲立法であり、弾圧立法です。
 この国会審議を通じてどこがどう変わったのか、何が明らかになったのかなどを改めて学びながら、安倍政権の暴挙に抗議し、秘密保護法の撤廃を求めていく運動のスタートにしましょう。

(文責・多幡)

2013年12月10日火曜日

秘密保護法が強行採決される:「九条の会」メルマガ第178号


 「九条の会」メルマガ第178号(2013年12月10日付け)が発行されました。詳細はこちらでご覧になれます。運動に活用しましょう。

 「事務局からのお知らせ」として次の記事などがあります。
他にも多くの記事が掲載されています。以下に、編集後記を引用して紹介します。
編集後記~秘密保護法が強行採決されました

 12月6日深夜、国会を取り囲む巨大な人波の中で、秘密保護法が与党によって強行可決されました。全国各地・各界の人びとの大きな反対の声を押し切って、国会の多数を握っている安倍内閣・与党が強行した憲法違反の稀代の悪法です。これによって、安倍内閣がめざす改憲と「戦争する国」へ、また一歩、歩みをすすめたのです。この暴走を許さず、憲法9条を破壊する悪法の廃止をめざして、共に運動を続けましょう。

 なお、次回12月25日のメルマガは、年末のためお休みし、次号179号は新年1月10日に発行致します。少し早いご挨拶になりますが、本年は大変お世話になりました。また、来年もよろしくお願い致します。
 (「九条の会」メルマガ読者登録はこちらでできます。)

特定秘密保護法に反対する学者の会が強行採決への抗議声明:一般の方も含め賛同署名募集中


 「特定秘密保護法案に反対する学者の会」は会の名称を「特定秘密保護法に反対する学者の会」に変更した上で、下記抗議声明への賛同人を引き続き募っています。賛同頂ける方は、同会のホームページで署名をお願いします。一般の方々の賛同も受け付けています。12月9日1時現在の署名は、学者3401名、その他支援賛同者1069名、計4470名となっています。



特定秘密保護法の強行可決に強く抗議します

 特定秘密保護法案は、憲法の定める基本的人権と平和主義を脅かす立法であり、日本の民主主義を戦後最大の危機にさらすものです。この法案に対して広く市民の間に反対や懸念の声がかつてなく広がったにもかかわらず、審議を尽くさないまま衆議院にひきつづき参議院においても強行採決が行われたことに、私たちは深い憂慮と強い憤りを覚え、この暴挙に対する抗議の意思を表明します。
 特定秘密保護法は、指定される「特定秘密」の範囲が政府の裁量で際限なく広がる危険性を残しており、指定された秘密情報を提供した者にも取得した者にも過度の重罰を科すことを規定しています。この法律によって、市民の知る権利は大幅に制限され、国会の国政調査権が制約され、取材・報道の自由、表現・出版の自由、学問の自由など、基本的人権が著しく侵害される危険があります。さらに秘密情報を取り扱う者に対する適性評価制度の導入は、プライバシーの侵害をひきおこしかねません。
 民主政治は市民の厳粛な信託によるものであり、情報の開示は、民主的な意思決定の前提です。特定秘密保護法は、この民主主義原則に反するものであり、市民の目と耳をふさぎ秘密に覆われた国、「秘密国家」への道を開くものと言わざるをえません。
 さらに、特定秘密保護法は国の統一的な文書管理原則に打撃を与えるおそれがあります。公文書管理の基本ルールを定めた公文書管理法が2011年に施行され、現在では行政機関における文書作成義務が明確にされ、行政文書ファイル管理簿への記載も義務づけられて、国が行った政策決定の是非を現在および将来の市民が検証できるようになりました。特定秘密保護法はこのような動きに逆行するものです。何が何でも特定秘密保護法を成立させようとする与党の政治姿勢は、思想の自由と報道の自由を奪って戦争へと突き進んだ戦前の政府をほうふつとさせます。
 いったい今なぜ特定秘密保護法を性急に立法する必要があったのか、安倍首相は説得力ある説明を行いませんでした。外交・安全保障等にかんして、短期的・限定的に一定の秘密が存在することを私たちも必ずしも否定しません。しかし、それは恣意的な運用を妨げる十分な担保や、しかるべき期間を経れば情報がすべて開示される制度を前提とした上のことです。行政府の行動に対して、議会や行政府から独立した第三者機関の監視体制が確立することも必要です。
 困難な時代であればこそ、報道の自由と思想表現の自由、学問研究の自由を守ることが必須であることを訴えたいと思います。そして「秘密国家」・「軍事国家」への道を開く特定秘密保護法案の強行可決に、私たちは学問と良識の名において強く抗議します。
 2013年12月7日
 特定秘密保護法案に反対する学者の会
浅倉 むつ子(早稲田大学教授、法学)
池内 了  (総合研究大学院大学教授・理事、天文学)
伊藤 誠  (東京大学名誉教授、経済学)
上田 誠也 (東京大学名誉教授、地震学)
上野 千鶴子(立命館大学特別招聘教授、社会学)

内田 樹  (神戸女学院大学名誉教授、哲学)

内海 愛子 (大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター特任教授、歴史社会学)

宇野 重規 (東京大学教授、政治学)

大沢 真理 (東京大学教授、社会政策)

小熊 英二 (慶応義塾大学教授、社会学)
小沢 弘明 (千葉大学教授、歴史学)

加藤 節  (成蹊大学名誉教授、政治学)

加藤 陽子 (東京大学教授、歴史学)

金子 勝  (慶応大学教授、経済学)

姜 尚中  (聖学院大学全学教授、政治学)
久保 亨  (信州大学教授、歴史学)
栗原 彬  (立教大学名誉教授、政治社会学)

小森 陽一 (東京大学教授、文学)
佐藤 学  (学習院大学教授、教育学)
佐和 隆光 (京都大学名誉教授、経済学)

白川 英樹 (科学者・市民)
杉田 敦  (法政大学教授、政治学)

高橋 哲哉 (東京大学教授、哲学)
野田 正彰 (元関西学院大学教授、精神医学)

樋口 陽一 (東北大学名誉教授、憲法学)

廣渡 清吾 (専修大学教授、法学)

益川 敏英 (京都大学名誉教授、物理学)

宮本 憲一 (大阪市立大学・滋賀大学名誉教授、経済学)

鷲田 清一 (大谷大学教授、哲学)

鷲谷 いづみ(東京大学教授、生態学)

和田 春樹 (東京大学名誉教授、歴史学)

以上の31氏を含む3181名(2013年12月7日9時現在)

ほかに賛同者(院生・学生・市民) 746名




(文責・多幡)

2013年12月9日月曜日

「特定秘密保護法に賛成したが兵士になるのはいや」の声も:12/8 大阪・天王寺での反戦宣伝行動で


 12月7日付けの記事でお知らせしました大阪空襲訴訟原告団・支える会主催の 12/8 反戦宣伝行動(大阪・天王寺で)について、大阪空襲訴訟原告の安野さんから次のような報告を貰いましたので、紹介します。


 8日の行動は、いろいろご協力をいただき、おかげさまで、無事終えることができました。総勢30人ほどでチラシの配布をして、署名をたくさんいただきました。
 道行く人の中には、「特定秘密保護法に賛成したが、兵士になるのはいやだ」といっている若い人もいました。「特定機密保護法の廃止の闘いはこれからですね」という声もききました。
 これからも、まだまだですが、よろしくお願いいたします。


(文責・多幡)

「平和こそが最高の経済政策」赤川次郎さん


 作家の赤川次郎さんが『図書』誌2013年12月号に、「踊れる平和が今」と題するエッセイを書いています。今年、ベネズエラから「エル・システマ・ユース・オーケストラ・オブ・カラカス」という若いメンバーの楽団が来日したことを紹介したあと、次のように述べています。
 ベネズエラの若者たちのように、「すてきな音楽が聞こえて来たら、踊り出したくなる」のは人間の本能。
 ところが「男女で踊るダンスは不道徳」という、一体いつの時代かの話かと思える規制が、今日本では行われている。
 赤川さんはさらに次のように続けています。
 戦前、憲兵が恋人たちを「軟弱だ」と殴打したような時代が、またやって来るのだろうか。
 麻生副首相の「ナチの手口に学べ」発言に続き、安倍首相は国会で「意志の力」を連発した。これもお気に入り(?)のヒトラーの愛用した言葉である。
 問題は言葉一つではない。ダンスの禁止がそのまま、「積極的平和主義」という名の戦争志向や武器輸出三原則の見直しへと分ちがたくつながっているということが問題なのだ。
 軍事産業がいかに国を荒廃させるか、アメリカを見れば明らかである。平和こそが最高の経済政策であることを、忘れてはならない。

 「平和こそが最高の経済政策」。そうです。弱者をいためつけるアベノミクスにだまされてはいけません。そして、「憲法9条こそが最高の防衛政策」です。

多幡記

2013年12月8日日曜日

一枚のハガキ

浅井千代子(本会世話人)

M新聞の読者のひろばで
貴女の名前を見たわ
と京都在住の詩人
白川淑さんから
美しい絵ハガキが届いた

もう四十年も前
大阪南YMCAで
人形劇グループを作り
ボランティア活動をしていた
彼女は其の頃既に将来性を秘めた詩人で
グループのリーダーであった
仲間には他に
東京の女流画家展に出品
賞をもらった方
朗読プロの多才な方その中で
グズで口下手の私は
何時も端っこで
人形制作と機関紙担当
十一年も在籍したのが不思議でしょうがない

彼女は住居を神戸から京都に移し退部
其の後度々女流詩人として
詩誌や新聞等に登場
さすがと感嘆していた
詩集も何冊か頂いた
私は其の後地域に活動の根をと
生活圏に戻った

長い空白を埋めて
思い出が一気に蘇った一枚のハガキ

M紙への投書は
NHKが八月に放映したETV特集
「届かぬ訴え—空襲被害者たちの戦後」
被害者への無策を嘆いての一文
その通りとの彼女の感想嬉しかった
早速お礼の返信に
悲惨な戦争体験者として
かつて軍国少女であった過去を悔い
今後もたゆまず発信していきたいと書いた

福島原発被害は拡大するばかり
その上歯止めを失った改憲の動き
更に秘密保護法の台頭には
心臓をえぐられる思いである
書きつづらなければならない現実に
幾重にもとりまかれている

『異郷』第26号(2013年10月)から。
[写真は浅井さん手製の9条ブローチをあしらった絵ハガキで、詩の
冒頭に出てくる、浅井さんの受け取った絵ハガキとは異なります。]

2013年12月7日土曜日

12/8 反戦宣伝行動:大阪空襲訴訟原告団・支える会主催で大阪・天王寺で


 大阪空襲訴訟原告の安野さんから、下記の行動のお知らせを貰いましたので、お伝えします。


 みなさま
 12月8日午後2時~4時、JR天王寺駅東口で、恒例の反戦宣伝行動を行ないます。 どなたでも、ご参加、ご協力ください。 あす、(8日)は、太平洋戦争の開戦日です。私たちは、戦争の恐ろしさを身にしみて覚えています。 再び戦争の惨禍にまみれることのないよう、戦争の、非人間性を訴えていきたいと思います。 ご参加、ご支援、お待ちしています。
大阪空襲訴訟原告団・支える会


(文責・多幡)

モミジ燃える。民意も燃える:秘密保護法、数の力で強行突破


 パブリックコメント、公聴会、各界の声明、国会周辺や各地でのデモなどを通じて、反対の声が空前の盛り上がりを見せた秘密保護法案、この、何が秘密かを明かさないままで行政が秘密をどんどん増やせるという大きな欠陥を抱え、戦前の軍機保護法と同じ性格をもち、憲法や国際条約にも違反する法案を、自民、公明両与党が2013年12月6日深夜の参院本会議で可決・成立させました。

 反対のたたかいは、ここで終わることはありません。有権者は次の国政選挙で、この法を廃止できる議員たちを選ばなければならないことを忘れはしないでしょう。

 [写真は、わが家の庭で6日に撮影したイロハモミジの紅葉。]

参考文献

  1. 「数の力、強行突破 秘密保護法 拍手と怒号、深夜の成立」、朝日新聞デジタル、2013年12月7日。
  2. 「(社説)秘密保護法成立 憲法を骨抜きにする愚挙」、同上。

後日追加の関連文献

  1. 「(社説)秘密保護国会 異様な光景の果てに」、朝日新聞デジタル、2013年12月8日。
  2. 「(天声人語)12・6を忘れない」、同上。

多幡記

2013年12月6日金曜日

秘密保護法案可決を強行すれば世界へ恥をさらす


 2013年11月3日付け朝日新聞の「声」欄に、「条約に違反の秘密保護法案」と題して、弁護士・熊野勝之さんの投書が掲載されました(こちらでご覧になれます)。熊野さんのいう条約とは、1979年に日本政府が批准した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」で、この条約は、全ての人が「あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由」(19条2項)を権利として保障しているもので、締約国にはこの条約を守る義務があります。

 熊野さんはこの条約について、締約国が権利を制限する場合、その制限は法律によって定め、かつ、他者の権利の尊重、国の安全の保護などに必要とされるものに限ると定めていること、さらに「法律は、制限の実施にあたる者に対して自由裁量を与えるものであってはならない」「十分な指針を定めていなければならない」という解釈基準も示していることを説明しています。

 他方、特定秘密保護法案には知る権利や取材の自由への配慮が盛り込まれたものの、「配慮」は権利の保障ではないこと、また、法案では内閣が承認すれば30年を超えても秘密は開示されないまま闇に葬られるとか、秘密の指定は行政機関の長が行うと定めるだけで指定基準を法律で定めていないなど、制限の実施者に自由裁量を与えるものであることを熊野さんは指摘し、法案は上記の国際規約に違反するものであると主張しています。

 熊野さんは、法案が強引に採決され衆議院を通過したあとの2013年11月28日付け「声」欄でも、「秘密法案 世界の流れに逆行」と題する投書(こちらでご覧になれます)で、国連人権理事会が任命している人権に関する専門家が、「内部告発者や秘密を報じる報道関係者にとって深刻な脅威を含んでいる」との声明を発表したこと、また、今年6月にできた「ツワネ原則」という、知る権利と秘密保護のバランスを定めた国際指針に照らしても、その基準に明らかに反していることを述べています。そして、国連の特別報告者が、一国の法案審理の段階でこれだけ強い懸念を表明し問いを投げかけるのは異例の事態であると警告しています。

 このように国際規約違反、国際基準違反を犯している法律を、得々として成立させようとする安倍政権の政策は、日本の恥を世界にさらそうとしていることに他なりません。

 熊野さんの最初の投書の末尾には、「法案が成立しても、公務員やジャーナリスト、市民の逮捕、起訴は憲法31条(法定の手続きの保障)違反[引用者注:この場合は、国際条約の締約国に課せられている、条約を守る義務への違反でしょう]で、無罪となるだろう」とあります。この言葉は、法案が可決されても、裁判を要することになる恐れはあるものの、公務員やジャーナリストや市民が知り伝える権利の発揮に少しも臆病になる必要がないことを示すものであり、私たちが今後とも、これらの権利を守るたたかいを進めるための勇気を与えてくれるではありませんか。

多幡記

「この文章は誰が書いたか分かりますか?」:「【堺からのアピール】教育基本条例を撤回せよ」ブログから


 昨日、「【堺からのアピール】教育基本条例を撤回せよ」事務局へ次の文章がメールで寄せられたそうです。
 自民党内の若い議員を見ても、怖い。過去の戦争を「すべて正しかった」と考えていて、頭は大丈夫かと疑いたくなる。日中戦争は明らかに侵略戦争だし、韓国併合は植民地化で、自衛戦争の面がある太平洋戦争でも、インドネシアの人を日本人化しようとしたのは間違っていた。
 […中略…]
 この2~3年、大っぴらにナショナリズムが叫ばれ、不快だ。国は戦中、言論統制により新聞など批判勢力を排除し、従わなければ「非国民」と斬り捨てた。なぜ同じことを繰り返すのか。そんなやり方では、国を誤っても幸せにすることはあり得ない。
 愛国心をあおって戦争し、負けたのが日本だ。
 2013年12月6日付け「【堺からのアピール】…」ブログ記事から引用し、紹介しました。同記事は「これ誰が書いたと思いますか」と質問し、そのあとに答を記しています。答は同記事をご覧下さい(記事には、上記引用の中略部分—前後の趣旨と一貫している—も記されています)。多くの皆さんが唖然となること、請け合いです。

 なお、「【堺からのアピール】…」ブログは、連日、秘密保護法案に関する最新状況を伝えて、地元での行動なども知らせています(きょうの堺市内での行動はこちら)。

多幡記

2013年12月5日木曜日

特定秘密保護法案反対の声明:大阪空襲訴訟原告団・支える会有志、体験に基づく悲痛な叫び込め


 大阪空襲訴訟原告団・支える会有志は、11月30日、大阪南のアメリカ村三角公園で、下記の通りの、体験に基づく悲痛な叫びを込めた声明を配布し、若い人たちに秘密保護法案の危険性を訴えました。



声明:特定秘密保護法は「戦争に向かう社会」への道を開くと懸念します。絶対に成立させないで下さい。

大阪空襲訴訟原告団・支える会有志

 11月26日夜、特定秘密保護法案が衆議院を通過しました。この法律は、「特定秘密」の名の下に国のあらゆる情報が隠されてしまう可能性があると、法律家や、憲法、歴史学者、ニュースキャスター、作家ら、数多くの人たちが危険性を指摘しています。私たち大阪空襲訴訟原告団も、自身の経験からこの法案の持つ危うさを懸念せずにはいられません。

 68年前、子どもだった私たちは、太平洋戦争末期の空襲に焼かれました。命だけはとりとめたものの、焼夷弾の火炎で大やけどを負ったり、爆弾の破片を受けて足を失ったり、生涯消えない傷が幼い身体に刻みこまれました。自身は疎開をしていたものの、かけがえのない家族を奪われ、孤児となった仲間もいます。

 戦後、どん底の暮らしの中で、私たちは親や大人たちに「どうして戦争を止められなかったの?」と訊かずにはいられませんでした。「気づいた時は戦争になっていた」。それが当時の大人たちの答えでした。大切な情報を隠され、新聞を読んでも本当のことを知ることができず、国が危険な道を突き進んでいたことに気がつかなかったと。私たちは今、当時の大人たちの無念の言葉が、自分たちに突きつけられていることを感じています。

 私たちは、国を相手にした空襲訴訟(現在・最高裁に上告中)の過程で、国が空襲被害の実態すら明らかにせず、被害者に補償はおろか最低限の援護措置も取らず、「国家の非常事態である戦争では、皆被害を受けたのだから、生命・身体・財産に何らかの被害を受けてもそれは我慢しなければならない」という理屈(戦争被害受忍論)で責任回避を続けていることを明らかにしてきました。

 先の戦争の後始末すらしていない政府が、何が「秘密」に指定されているかさえ国民が知ることができず、いくらでも拡大解釈できる特定秘密保護法を持てば、どうなるのか? 国民の知る権利や表現の自由はせばめられ、戦時下と同じような暗黒な社会をつくる道を開きかねないと懸念します。

 戦争体験者である元自民党幹事長の野中広務さんは「今、戦争の足音が聞こえてくるといっても過言ではありません。与党と野党の一部との修正協議、我々が恐れた昔の『大政翼賛会』のようです」と警告しています(兵庫県保険医協会での講演)。国民の素朴な懸念・疑問にも何ら答えることなく、慎重審議を求める声にすら耳を貸さず、拙速に法案を通す権力の暴走」といえる態度は、戦争への道の始まりではないかと私たちは恐れます。

 先の戦争が終わったあと、焼け跡に立ち「私はだまされていた」と言った作家がいました。その経験を知る私たちには、再び「だまされない」責任があります。だから心から訴えます。特定秘密保護法案を絶対に成立させないで下さい。空襲被害者の「遺言」としてどうか耳を傾けて下さい。

 2013年11月30日

連絡先 072-271-5364 安野輝子



(文責・多幡)

映画人・学者・国際人権NGOなどなど:秘密保護法案反対が空前の広がり—参院強行採決は許せません


 「学者・研究者の反対声明の広がり、シナリオ作家や脚本家団体の共同声明、映画監督や俳優による『反対する映画人の会』の結成…。表現の自由と基本的人権を侵害する希代の悪法・秘密保護法案に反対し、廃案を求める声は空前の広がりをみせています」として、2013年12月4日付け『しんぶん赤旗』の記事が「特定秘密保護法案に反対する映画人の会」、「特定秘密保護法案に反対する学者の会」、国際人権NGOなど6団体の動きを紹介しています。

 さらに同紙の「秘密保護法案直ちに廃案に:声明相次ぐ」と題する別の記事は、筆者も所属する日本科学者会議が、さる12月2日、米田貢事務局長名の声明「特定秘密保護法案は慰安を重ねて求め、日本版NSC設置・米軍新基地建設に反対する」を発表したことなどを伝えています。

 同記事は、科学者会議の声明が、秘密保護法案は「国民の知る権利を奪い、広範な分野の科学研究をも阻害する」と指摘し、また、国家安全保障会議(日本版NBC)の活動をチェックすることを阻むのも、特定秘密の壁だとして、同法案の廃案を求めていることを紹介しています。声明の全文はこちらでご覧になれます。

 参議院は、このような空前の反対の広がりを前にして、良識の府の名に恥じないよう、この悪法案を強行採決しなことが強く求められます。

多幡記

2013年12月4日水曜日

九条科学者の会がニュースレター号外発行:特定秘密保護法案などで


 九条科学者の会は、2013年12月4日、特定秘密保護法案などについて、ニュースレター号外(メールマガジン形式)を発行しました。以下にその内用を紹介します。



■ 九条科学者の会事務局は、11月6日に「国家安全保障会議設置法案」および「特定秘密保護法案」に関する事務局長談話を発表しました。こちらでご覧下さい。

■ 現在、特定秘密保護法案の審議が参議院で続けられ、12月6日にも採決といわれていますが、ぎりぎりまで反対運動が続いています。いまからでも参加できる取り組みをご紹介します。
  • 署名活動
    • 「明日の自由を守る若手弁護士の会」
      AVAZZのネット署名システムを利用して、「秘密保護法案」反対の署名を集めています。
      10万名目標ですが、現在14,272名です。この署名は、研究者に限定されません。一般有権者対象です。こちらでお願いします。
    • 「特定秘密保護法案に反対する学者の会」
      12月3日に学者2006名の[追加]賛同署名をもって記者会見を行い、現在、さらに賛同署名を呼びかけています。こちらでお願いします。
  • 国会周辺での反対行動
    • 12月4日
      • 「秘密保護法」廃案へ! 12・4国会ヒューマンチェーン(こちら参照)
        12時~13時30分
        参議院議員会館前~衆議院第二議員会館前~官邸前
        ヒューマンチェーン一回目 13時
        ヒューマンチェーン二回目 13時30分
        主催:「秘密保護法」廃案へ! 実行委員会
      • ※委員会採決時の緊急行動
        昼12時~13時 参議院議員会館前
        夜18時30分~19時30分 参議院議員会館前
        主催:同上
    • 12月5日
      • 怒りのドラムデモ(こちら参照)
        15:00~21:00(予定)
        官邸前抗議
    • 12月6日
      • 「秘密保護法」廃案へ! 12・6大集会&デモ
        18時30分~19時15分 (開場17時30分)※19時15分 デモ出発
        日比谷野外音楽堂
        主催:「秘密保護法」廃案へ! 実行委員会
      • 怒りのドラムデモ(こちら参照)
        15:00~21:00(予定)
        官邸前抗議

    ■ 学習会のご案内

    「九条科学者の会かながわ」学習会(詳細はこちら
    • 講演:改憲を先取りする秘密保護法
    • 講師:清水雅彦氏(憲法学・日本体育大学准教授)
    • 日時:2013年12月15日(日)14:00~16:30
    • 場所:鶴見大学会館 2階研修室204
    • 交通:JR京浜東北線鶴見駅西口徒歩2分
    • 資料代:200円
    • 主催:九条科学者の会かながわ・日本科学者会議神奈川支部

(文責・多幡)

2013年12月3日火曜日

「特定秘密保護法案に反対する学者の会」の声明賛同者が2300人超える


 特定秘密保護法案が市民のデモを弾圧にも使われる危険性が、石破発言で明らかになりました。

 「特定秘密保護法案に反対する学者の会」がさる11月28日に発表した声明(当初発起人・賛同者 31名、第一次分賛同者 304名)への賛同者が2300人を超え、同会はきょう12月3日午後4時から5時にかけて、東京千代田区の学士会館で「2000余名の学者の声明」記者会見を行う予定です。詳しくは同会ホームページをご覧下さい。

 不肖筆者も同声明の第二次分賛同者に加わりました。賛同署名がまだの学者・研究者の方がたは、上記ホームページでぜひ署名して下さい。

多幡記

12/7 大阪革新懇が「府民のつどい」を開催


 大阪革新懇が「府民のつどい」を12月7日に開催します。

 講演は元裁判官の森野俊彦さんの「『戦争する国』への暴走を許さず、憲法守りぬく政治を」

 秘密保護法が衆議院で強行に採決され、この国は「戦争する国」に暴走し始めています。憲法を守り抜く政治をと訴える元裁判官・森野さんのお話は、私たちを勇気づけるものと思います。多数、お誘い合わせのうえおいでください。
  • と き 12月7日(土)午後1時30分~(3時30分閉会予定)
  • ところ 国労大阪会館(JR環状線天満駅近く)
  • 会 費 300円
  • 連 絡 TEL: 06-6357-5302

 上掲のチラシ・イメージは、クリックすると拡大版をご覧になれます。

(文責・多幡)

2013年12月2日月曜日

石破氏「絶叫戦術はテロ行為」発言の本音


 自民党の石破茂幹事長は11月29日付けの自身のブログで、特定秘密保護法案に反対する市民のデモについて「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と批判しました。

 石破氏は12月1日、富山県南砺市での講演で、「表現に足らざるところがあることはおわびしなければならない」と述べ、ブログでの発言を謝罪しました。しかし、その後、氏は記者団に「一般の方に大音量という有形の圧力を加えるという点で、(街頭デモは)民主主義と相いれない部分があり、(テロと)相通ずるものがある」と強弁しました。朝日新聞(こちらこちら)ほか各紙が報道しています。

 審議を十分に尽くさないで特定秘密保護法案を衆院で強行採決した自民党の幹事長に、民主主義を語る資格はまったくありません。そればかりか、政府に反対する市民の声をテロリズムと同一視するところに、同法案が成立した暁には、これが「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」を目的にしていることを利用して、国会周辺のデモまでも取り締まろうという本音が見えているのではないでしょうか。

 日本を再び戦争の暗い時代に引き戻そうとする特定秘密保護法案は、ぜひとも粉砕しなければなりません。

多幡記