『図書』誌、2013年10月号 p. 48 に掲載の「禁じられた大人の遊び」というエッセイで、作家の赤川次郎さんが、「ナチスの手口に学べという麻生副首相の発言は、原発事故に匹敵する『大惨事』」と呼んで、ナチスと安倍政権の類似性を指摘し、安倍政権を鋭く批判しています。
赤川さんは、まず、ナチスの占領下のフランスで作られたナチスに協力的なヴィシー政権が、フランスの国是「自由・平等・博愛」に替えて「労働・家庭・祖国」をフランスの目標にしたが、このヴィシー政権の三つの柱は、そのまま安倍政権の目指す「美しい日本」に重なる、と述べています。
次に赤川さんは、ヒトラーが経済的苦境への人々の不満を吸収して人気を高め、暴力への恐怖で人々を黙らせた点でも、「アベノミクス」という内容のない言葉で支持を受けた安倍政権はよく似ているとし、「人々を黙らせる」を思わせる、選挙演説中のプラカード没収事件についても述べています。
上記の事件について、インターネットで検索してみると、2013年7月14日付け『東京新聞』朝刊「こちら特報部:ニュースの追跡」欄の「首相の考えを聞けないの? 参院選演説で聴衆のボード没収」と題する記事で報道されていたことが分りました。その記事のリード部分は次の通りです。
「原発廃炉に賛成?反対?」。安倍晋三首相の街頭演説で、女性(40)がこんな質問ボードを掲げようとして、没収された。掲げる前に、自民党スタッフや警察官を名乗る男性4人に取り上げられた。この様子の動画はインターネットで公開され、「言論封殺か」と疑問の声が噴出する騒ぎになっている。[記事全文はこちらに引用されています。]
この事件は「安倍政権の素顔をさらした出来事として、もっと問題にされるべきだった」と、赤川さんは述べ、「思想・信条の自由」を警察が自ら否定したもの、と批判しています。
赤川さんは最後に、「汚染水の膨大な流出に何の手も打てずにいる原発事故への無責任な」姿勢の安倍政権が、「この現実を無視して他国へ原発を売り込むのは正に『禁じられた遊び』」と、厳しく非難しています。
ここで、赤川さんのエッセイの題名を思い出して下さい。そして、エッセイの前半に、ルネ・クレマン監督の代表的映画『禁じられた遊び』のブルーレイ版には、「存在すら知らなかった別のオープニングとエンディングが収録されていて驚かされた」という話があったことを付記して初めて、題名から結語までのつながりがご理解いただけるでしょう。——推理小説家のエッセイを推理小説風に紹介してみました。
多幡記
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