原爆投下後の広島を生きる少年を描いた『はだしのゲン』で知られる漫画家・中沢啓治さんが、肺がんのため12月19日に広島市内の病院で亡くなりました。73歳でした。
『東京新聞』は、死去の分かった25日の夕刊に「核廃絶 ゲンに託す」の題名で訃報を掲載しています。その記事は、中沢さんが『はだしのゲン』執筆の動機について、戦後に母親が亡くなった際、ぼろぼろの遺骨を見て原爆や戦争への怒りが噴き出したと語っていたことや、また、その漫画の中で一生懸命に生き抜く人の姿を描いたことについて、「何回踏まれても大地に根を張り真っすぐに伸び、豊かな穂を実らせる『麦』がテーマ」と話していたことなどを紹介しています。
同紙は26日朝刊にも、「ゲンは怒ってるぞ」と題する記事で、中沢さんが2009年に白内障と網膜症などで漫画家引退を表明した後も、「しゃべれるうちは言いまっせ、ゲンは怒ってるぞ、って」と、原爆への怒りを持ち続けていたことなどを報じています。そして文末で、核兵器や戦争のない世界を築いていってほしいとの中沢さんの遺志を、未来を担う若い世代がゲンとともに受け継ぎ実現させてほしい、と訴えています。
2010年5月の核不拡散条約 (NPT) 再検討会議では、核保有国を含む189の国々が「核兵器のない世界の平和と安全を達成する」ことを決めています。いま、全ての国の政府がすみやかに核兵器禁止条約の交渉を開始することが求められます。
多幡記