名古屋大学名誉教授・森英樹氏の講演から
本会事務局長 上田規美子
会場いっぱいの約270人が参加し、熱気が感じられました。「昨年の総選挙で自民党が圧勝したが、これは議席上のことで、小選挙区制の効果であり、恐れるに足りない、けれども、多数議席を得た安倍政権は、『憲法改正』に向けての動きを強めてくる」として自民党の「憲法改正草案」について、現行の日本国憲法と比較して話を進められました。
特に前文は、現行憲法の全文を破棄し、「国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」ということが強調されています。天皇については日本国の元首であると明確に規定しています。
第9条は1項の戦争の放棄は残しながらも、2項の「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」が削除され、内閣総理大臣を最高指揮官とする「国防軍」が新たにつけ加えられました。また、緊急事態に対応するために第9章が新たに設けられ、緊急事態措置への国民の服従が強制されるものになっています。
9条改憲派が圧勝し、日本維新の会という自民党より右の改憲政党が登場したことで、自民党の方がマシではないかという見方も出てきているということです。安倍首相は公明党よりむしろ維新との絆が強いけれども、維新の会は海外では「王政復古」と受けとめられています。
安倍首相は7月21日投票の参議院選挙までは「安倍カラー」を出さずにいますが、「9条改正」をしやすくするために、まずは「96条改正」をするというのが本音です。3月7日には「96条改正をめざす議員連盟」が活動を再開し、民主党、維新の会、みんなの党の有志議員が勉強会をはじめたと報告されています。そして、安倍内閣では、9条があるために規制してきた「武器輸出三原則」を事実上撤廃し、集団的自衛権の行使に踏み出そうとしているのです。
けれども、国会内と世論のずれは深く、朝日新聞の今年一月末の世論調査で「憲法改正」反対は5割を超えています。また、日本の改憲の動きにアジアや世界から警戒の声も高まっています。今後は、改憲手続きを定めた96条「改正」が焦点になっていきます。その狙いが9条の改定にあると指摘するだけではこの動きを押し返すことは出来ません。実態をあばくことと、それは私たちの生活をどうすることなのか具体的に知らせていくことが重要だ、と話されました。
わたしたち福泉・鳳地域憲法九条の会も、引き続き宣伝と署名活動を強めて、9条を守る世論作りに頑張ります。
井崎孝子(本会世話人)
記事、絵手紙の挿絵ともに『憲法九条だより』第20号(2013年4月1日)から
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