2013年1月4日金曜日

これからが正念場:新しい年を迎えて


雨後のブラーの島(水彩画・部分)

本会代表 多幡達夫(文と絵)

 2013年は巳年、すなわちヘビの年です。かつて朝日新聞に連載されていた大岡信氏の「折々のうた」に、ヘビを読み込んだ次の短歌が紹介されていました。
 ばんざいの姿で蛇に銜(くわ)えられ春らんまんの蛙いっぴき
——鳥海昭子『花いちもんめ』

 大岡氏の解説には、まず、この歌の意味だけを見れば「動物世界の残酷物語ということになろう」とあります。続いて、歌を読み下すときの印象は別で、明るさがあることを指摘し、それは「春らんまんの」という「思いきった形容の効果」だと述べています。

 明るい印象があれば、一見残酷な歌でも年賀状に使ってもよかろうと、私は思いました。しかし、衆院選の結果を見て、次のような、残酷さにかかわる連想を、この歌を引用したあとに書き加えざるを得ませんでした。

 「前途ある多くの若者が、ばんざいを唱えながら散って行った時代へ歴史を逆戻りさせてはならないと、切に思うこの頃です。」

 衆院選で多数を取った自民党が準備している改憲草案は、大勢の若者たちが強制的に軍隊に入れられ、このように無駄に命を落とした時代を再現するものです。しかし、自民党の「圧勝」は、多党乱立、低投票率、小選挙区制の弊害などによる見かけ上の現象で、民意は決して、こうした恐ろしい「改憲」や、危険な「原発再稼働」を認めて、「憲法9条護持」や「原発ゼロ」に背を向けたのではありません。

 9条を守り活かし、また原発ゼロを早期に実現するための闘いは、これからが正念場と思って、私たちは、いま気持ちを引きしめなければなりません。

 上の水彩画(部分)は、私がイタリア旅行で訪れたブラーノ島の街の、雨後の風景を描いたものです。その旅行をしたのは、2003年、イラク戦争が始まって間もなくで、イタリアのどこの街でも、PACE(パーチェ、「平和」のイタリア語)の文字の入った七色横縞の旗が家々に掲げられ、イラク戦争反対を表明しているのを見て感心しました。絵の左端の商店の二階の壁にもその旗が見られます(左上隅)。私たちも、「9条を守り活かそう」の意思表示をしっかりと示して行きましょう。

本会の『憲法九条だより』第19号(近日発行予定)から