1月12日付け朝日新聞は、今月16日に同新聞社を退職する主筆・若宮啓文氏の執筆した表記題名の記事(アクセスにはログインが必要)を掲載しました。氏は次のように書いて、いま9条を変えることは危険であると説いています。
かつて自民党の代表的な護憲派だった宮沢喜一元首相がこう語っていたのを思い出す。「この憲法を維持できるかどうかは周辺国の日本への態度によって強く影響される。同時に日本が改憲で違った道を歩むかどうかによっても、その対応は変わるでしょう。日本はこうした国から敵視されたくないが、そうならないように、こちらから刺激する必要もない」いま、その心配が現実味を帯びつつある。刺激と反発の悪循環は止めなければならない。周辺国の指導者にも日本のリーダーにも、ぜひ考えてもらいたいことである。
若宮氏が護憲の姿勢をとっている点はよいのですが、その姿勢はいかにも弱々しいものです。文中に、「9条を改めることがすべて危険だなどとは思わない」、「日米同盟は基本」などの言葉が見られることは、現憲法の平和主義の有効性を信じきっていない証拠です。氏のいう「日米同盟」とは日米安全保障条約という名の軍事同盟であり、いまや世界で過去の遺物になりつつある軍事同盟にいつまでもすがりつき、軍事対抗主義を捨てきれない考えは、本質的には氏が批判する安倍首相のものと大差がありません。ここに、現在の日本の大手メディアの悲しむべき限界があります。
多幡記