『朝日新聞』夕刊に池澤夏樹氏が連載しているエッセイ「終りと始まり」の10月2日の分は「資本主義が帰ってくる:復旧と復興の違い」と題して書かれている。——震災からの復旧段階では私利を離れての行動が見られたが、それが一段落して復興の段階になると、私利の原理が戻って来る。それを非難するよりも、人間の中にある私利を離れて公共を考える資質を助長することが大切である——という主旨の文である。
最後にいまの領土問題に話が及んで、次のように記されている。
最後にいまの領土問題に話が及んで、次のように記されている。
私利と言えば、震災の後で石原慎太郎氏が「これは天罰だ。日本人は我欲を捨てなければならない」と言った。天罰にしては分配が不公平だと憤慨したが、しかし我欲を抑えなければならないというのはそのとおりだ。この池澤氏の指摘を除いて、発端を作った石原氏への非難がほとんど聞かれないのは、どうしたことか。
しかして石原氏が火を点(つ)けた昨今の領土問題だ。竹島=独島も尖閣諸島=魚釣島も、実のところ国家の我欲そのものではないのか?
仲よくしている方がお互いずっと利があるのに、不幸なことである。
多幡記