2012年9月30日日曜日

早くも信頼出来ない原子力規制委


 今月発足した原子力規制委員会(田中俊一委員長)が、25日、共産党の機関紙『しんぶん赤旗』記者の記者会見への参加を「特定の主義主張を持った機関の機関紙はご遠慮いただく」との理由で認めなかったばかりか、同紙の抗議に対して、「特定の主義主張」は撤回しながらも、「政党機関紙だからダメ」、「会見室のスペースのため」など、排除理由を変えて、あくまでも排除する姿勢です(関連の『東京新聞』記事がこちらに全文引用されています。最新の『しんぶん赤旗』記事はこちら)。

 規制委と規制庁は19日の発足に合わせ、「透明性の確保」を運営方針とする一方、会見に参加できる報道機関を、一般紙や放送局などの記者と、これらの媒体に記事を提供するフリー記者などに限るという内規を定めていたということで(『朝日新聞』記事)、すでに内部矛盾が露呈しています。さらにこれは、憲法第21条にある検閲の禁止、あるいは出版その他一切の表現の自由に背く疑いのあることを持ち出すまでもなく、規制委にとって手近な規制委員会設置法第25条「国民の知る権利の保障に資するため、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保しなければならない」、原子力基本法第2条の定める、原子力開発利用に関する民主・自主・公開の平和利用3原則に照らしても全く不都合な姿勢といわなければなりません。

 また、電源開発(Jパワー)は28日、中断している大間原発(青森県)の建設工事を、政府が着工済みの原発の建設継続を容認したことを受けて、年内にも再開する方針を固めました。政府(経済産業省など)は新増設の判断も原子力規制委員会に丸投げしようとしましたが、規制委は「政府の仕事」とボールを返したということです(『東京新聞』記事)。同原発について田中委員長は、当然ながら、今後新たに作る安全基準で改めて審査する考えを示しましたが、関連して「新たな基準での審査が終わるまで工事の再開を待つほうがむだはないと思うが、事業者の判断であり、待ちなさいということはない」いう認識を示していたということです(これを伝える NHK ニュースがこちらに引用されています)。これらの事態は、判断主体を尊重した一見合理的な考えに基づくもののようでありながら、国民の目から見て疑問の残る状況といわなければなりません。赤旗記者の閉め出しと併せて考えれば、原発事業者に甘く、国民の目からは隠すという従来の原子力行政に輪をかけた態度ではないでしょうか。

 追記:次の関連記事もご覧下さい。 後日の追記:さる10月2日、原子力規制委員会は、世論の力で「排除」を撤回し、『しんぶん赤旗』の記者会見参加を認めました。詳しい報道はこちらにあります。

多幡記