詩:浅井千代子(本会世話人)
春爛漫の
花屋の店先
今日も立止まって
百花繚乱の花々を
眺めて帰ってきた
三月は
わたしの誕生月
だがとてつもない
悲しい月になってしまった
二〇一一年三月十一日
大戦争が五つも六つもドッと押し寄せたような
突然の悲劇が東日本を襲った
大地震による牙を剥いた漆黒の大津波
大地も人も呑み込んで
その上に
原子力発電所の大爆発
奪われた多くの尊い生命
この国の未来が一瞬にして掻き消えた
希望が芽吹く三月は
それは美しい桃色の季節
それが今
太陽が涙する灰色の三月
わたしはもうこれからは
鎮魂の三月として
誕生日を祝うことはない
『異郷』第20号(2012年4月)から
写真:多幡達夫
写真:多幡達夫