2012年4月14日土曜日

「君が代」2:その替え歌


 「堺からのアピール:教育基本条例を撤回せよ」のブログに、「『君が代』替え歌」と題する記事が2012年3月30日付けで掲載されていました。記事は二通りの替え歌を紹介していますが、「別の替え歌」として後の方に掲載してあるものが、元のものらしく思われました。そこで、「君が代替え歌」をインターネット検索してみると、「空耳アワーな、素晴らしい君が代替え歌」と題するブログ記事("P-navi info" 2006年5月29日)に、「別の替え歌」の方が産経新聞に紹介されたとして、次の通り引用してありました。
   Kiss me(私にキスして)
Kiss me, girl, your old one.
(きーみーがーよおは)
Till you're near, it is years till you're near.
(ちよにいぃ、やちよぉにぃ)
Sounds of the dead will she know?
(以下、本歌略)
She wants all told, now retained,
for, cold caves know the moon's
seeing the mad and dead.

【訳】 私にキスしておくれ、少女よ、このおばあちゃんに。
おまえがそばに来てくれるまで、何年もかかったよ、そばに来てくれるまで。
死者たちの声を知ってくれるのかい。
すべてが語られ、今、心にとどめておくことを望んでくれるんだね。
だって、そうだよね。冷たい洞窟は知っているんだからね。
お月さまは、気がふれて死んでいった者たちのことをずっと見てるってことを。

 産経紙からの引用をした P-navi 子は、この歌詞について、「もうとても感心してしまった」と書いています。私も、よく出来ていると思いました。替え歌の意味について産経紙は、「政府に賠償請求の裁判を起こした元慰安婦と出会った日本人少女が戦後補償裁判で歴史の真相が明らかにされていくのを心にとどめ、既に亡くなった元慰安婦の無念に思いをはせる—という設定」と説明していたそうです(元の記事は、現在インターネット上にはないようです)。

 また、同紙はある大学教授の、「国旗国歌法の制定後、正面から抵抗できなくなった人たちが陰湿な形で展開する屈折した抵抗運動だろう。表向き唱和しつつ心は正反対。面従腹背だ。…」という意見も載せていたということです。民衆の抵抗運動(独善的な暴力行動などはこれに含まれません)は、いつの時代でも、無謀な悪政を正そうとする正当なものです。そうした運動を「陰湿」とする見方こそは、屈折しているといわなければなりません。P-navi 子も「人にはいろいろな抵抗が許されるのよ。『陰湿な』というのは、イヤだと思っている歌を無理矢理歌わせることでしょう?」と述べています。

 なお、「君が代替え歌」の検索結果から、2011年3月2日の朝日紙が、「尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件などをきっかけに自民党は保守色を強めており、『君が代』の替え歌など国歌への侮辱に刑事罰を科す改正案も検討する」という内容を含んだ記事を載せていたことを知りました(ウェブサイト『まとめたニュース』の「『君が代』の替え歌など国歌への侮辱に刑事罰を科す改正案を検討」と題するページ)。こういう記事は朝日紙だけとして、疑問も投げかけられています(ウェブページ「君が代替え歌に刑事罰検討 不敬罪の復活?」、ベストアンサー以外の回答の1件目)。

 しかし、自民党が替え歌に刑事罰ということを本当に検討しているとすれば、それは、思想弾圧がまかり通った敗戦前の暗い時代への逆行を企むものであり、陰湿さも極まるというものです。ブログ "Afternoon Cafe" の著者も、2011年3月4日付けの記事でこの件にふれて、「自民党はこのような明白な思想弾圧法案を憲法違反でないと考えていることになるわけです。自民党の民主主義や人権に対するセンスは絶望的にゼロだと断言します」と、批判しています。(多幡記)