2012年4月28日土曜日

平和主義抹殺、明治憲法回帰のアナクロニズム:自民憲法改正草案


 自民党が4月27日、新しい憲法改正草案を発表したとの報道がなされました(たとえば、毎日紙「自民憲法改正草案:憲法9条に国防軍、天皇は『元首』」——以下に紹介する草案の要点は、この記事を参考にしています——)。

 9条に首相を最高指揮官とする「国防軍」を持つと明記し、天皇を「日本国の元首」と規定し、国旗・国歌への尊重義務を設けるなど、2005年にまとめた新憲法草案よりもさらに強い保守色を鮮明にしたものとなっています。

 9条については、また、現行の憲法解釈では認めていない集団的自衛権の行使の容認を明確化しています。そして、武力攻撃や大規模災害などの際に、首相が「緊急事態」を宣言し、国民が国の指示に従う義務があるとの規定も盛り込んでいます。

 憲法改正の発議要件については、現行の衆参両院の「3分の2以上」の賛成を「過半数」に緩和しています。

 さらに、「信教の自由」では、国や地方公共団体が、社会的儀礼や習俗の範囲内で宗教的活動に関与できると規定し、首相の靖国神社公式参拝への道を開く意向です。

 このような改正草案は、現憲法の平和主義を抹殺し、民主主義を弱体化させるものであり、明治憲法への回帰思想に満ちたアナクロニズム的なものといわなければなりません。(多幡記)