2006年9月9日土曜日

改憲問題と世界の未来

 「アメリカの対日政策と改憲問題」という論文 [1] を読んだので紹介する。著者の中島氏(一橋大学)は、まず、アメリカの世界戦略分析し、同国が
  1. テロリストのネットワークなどの脅威に対する、相手の姿が見えない「非対称型」の戦争
  2. グローバルな規模での戦争
  3. 既存の自衛権の論理から逸脱した「先制攻撃」を辞さない姿勢
  4. 長期戦争
の4点を特徴とした戦争認識を持ち、そのための戦争遂行態勢づくりを目指していることを明らかにする。次いで、それに伴って生じている「日米同盟」の拡大、新ガイドライン以降のアメリカの対日要求の変化等についても詳述している。

 アメリカは上記のような世界戦略の中で、長期戦争のただ中にあることを表明し(2006年2月の「4年ごとの国防計画見直し」)、同盟国にはこの戦争を共同で戦うための役割・能力を期待している。したがって、アメリカは日本に対しても、「世界秩序の維持」のためのグローバルで能動的な役割を求めることになる。そこで、その障害となっている日本の憲法9条への不満が、アメリカの政界において表面化する状況を呈している。こうした背景を見つめるならば、集団的自衛権を当然の権利のようにいう改憲論のごまかしと危険性が明瞭になる。

 中島氏は次のように結論づけている。

 憲法9条の「改正」は、日本がアメリカを中心とする世界秩序の維持・拡大を目指す勢力の中核的同盟国となることを意味する。それゆえ9条改憲は、アメリカの戦争行為に荷担するか否かの問題であると同時に、アメリカ主導の世界秩序の立場に立つのか、それともより公正で民主的な「もうひとつの世界」をつくる立場に立つのかが問われる問題でもある。

 「もうひとつの世界」に関連して、中島氏は文献 [2] を引用している。この本は、「世界経済フォーラム」(通称ダボス会議)に対抗して開催された「世界社会フォーラム」の記録で、民衆の立場から、グローバリゼーション下の国際投機、福祉と環境、反戦、差別など、いろいろな問題のそれぞれについて政策提言を行っている。

 改憲問題において日本の国民がなすべき選択は、世界の未来における平和に大きくかかわっているのである。(呼びかけ人代表・多幡達夫)
  1. 中島醸, 日本の科学者 Vol. 41, No. 8, p. 4 (2006).
  2. ウィリアム・F・フィッシャー, トーマス・ (編), もうひとつの世界は可能だ (日本経済評論社, 2003).
[ブログサイト "Ted's Coffeehouse"(2006年9月9日)から転載]

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